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電子帳簿保存法で見積書の保存は必要?契約に至らない場合の扱い...

作成日:2026.9.30

更新日:2026.9.30

電子帳簿保存法で見積書の保存は必要?契約に至らない場合の扱いと保存方法を専門家が解説

*記事の内容は、記事公開日時点の情報です。現在とは異なる場合があります。

見積書にも保存義務はあるのか、契約に至らなかった相見積もりは破棄してよいのか。電子帳簿保存法への対応を進めるなかで、請求書や領収書に比べて判断に迷いやすいのが見積書の扱いです。 

結論から言えば、見積書は電子帳簿保存法の保存対象です。ただし「契約に至らなかった見積書」は、その見積書が帳簿や支出の説明に使われるかどうかで、保存の要否が分かれます。本記事では国税庁の公表資料に基づき、見積書の保存義務の基本から、形式別の保存方法、変更・差し替え時の保存範囲、契約に至らない場合の線引きまでを体系的に解説します。注文書や請求書も同じ考え方で保存が必要となるため、あわせて確認しておくと判断に迷いません。 

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見積書は電子帳簿保存法の保存対象

見積書は保存が必要な書類です。電子帳簿保存法(以下、電帳法)や法人税法などの法令上の位置づけを確認しながら、「誰が・何を・どれだけの期間」保存するのかという基本を押さえましょう。 

1-1. 見積書は「国税関係書類」に含まれる取引関係書類

見積書は、電帳法における「国税関係書類」のうち「取引関係書類」に分類されます。法人税法等の法令により「取引に関して作成または受領した書類」の保存が義務付けられています。制度の全体像は、国税庁の電子帳簿保存法パンフレットでも確認できます。 

見積書は、契約の成立過程や取引条件を示す証憑(しょうひょう=取引の事実を証明する書類)です。最終的な取引内容を裏付ける帳簿との関連性が認められるため、請求書や領収書と同様に適切な保存が求められます。 

1-2. 発行側・受領側の双方に保存義務がある

保存義務は、見積書を受け取った側だけのものではありません。受領側は受け取った見積書そのもの、発行側は交付した見積書の写し(控え)が保存対象となります。 

「自社が作成した見積書は対象外」と誤解されがちですが、控えを作成している場合は取引関係書類として保存が必要です。また、PDF化した見積書をメールで送付した場合は、後述する「電子取引」に該当するため、発行側・受領側の双方が電子データのまま保存する必要があります。 

1-3. 保存期間は原則7年(欠損金がある場合は最長10年)

法人の場合、見積書を含む取引関係書類は、その事業年度の確定申告書の提出期限の翌日から原則7年間の保存が必要です。青色申告書を提出した事業年度に欠損金(赤字)が生じ、繰越控除を受ける場合は、最長10年間の保存が求められます。 

2.【早見表】見積書の保存要否とパターン別の対応 

自社のケースでどの保存方法を取るべきかを、受領・発行と紙・電子の別にまとめました。判断の起点は「取引に関して受領・交付した書類かどうか」です。まず授受した形式によって保存方法が決まり、そのうえで取引との関係によって保存の要否が決まる、という二段構えで読み進めてください。 

ケース

保存の要否

保存方法・判断のポイント

紙で受け取った見積書

必要

紙のまま保存、またはスキャナ保存(一般書類)(→3-1・3-2)

メール添付やWebでダウンロードした見積書

必要

電子取引データとして電子のまま保存(義務)(→3-1・3-5)

自社が発行した見積書の控え

必要

交付した控えを授受の形式に応じて保存(→1-2・3-1)

契約に至らなかった見積書

ケースにより異なる

帳簿計上や支出の説明に使われるかどうかで判断(→5-1・5-3)

※発行側は、交付した見積書の控えを作成している場合に保存対象となります。
※電子取引に該当するかどうかは、契約が成立したかどうかとは関係なく、授受した形式によって決まります。 

3. 電子帳簿保存法に則った見積書の保存方法 

見積書は、受領・発行した形式によって適用される保存ルールが異なります。形式別の3つの保存方法と、電子保存に共通する2つの柱を押さえましょう。 

3-1. 受領・発行の形式で決まる3つの保存方法

見積書の保存方法は、受け取った・送った形式によって次の3つに分かれます。

保存区分

該当するケース

ポイント

紙での保存(原則)

紙で受け取った場合

そのまま紙で保存することが認められています

スキャナ保存(任意)

紙で受け取った書類をデータ化して保存する場合

スキャンやスマートフォンでの撮影によりデータ化します。見積書は国税庁の区分上「一般書類」にあたるため、契約書や請求書などの「重要書類」と異なり、入力期間の制限を受けず適時に入力する方式が認められています(グレースケールでの保存も可)。
ただし、電磁的記録の作成・保存に関する事務手続を明らかにした書類の備え付けなど、一般書類に応じた要件を満たす必要があります。

電子取引データ保存(義務)

メール添付のPDFやWebサイトからダウンロードした場合

電子データのままの保存が必要です。紙に出力して保存することを認めていた宥恕措置は2023年12月末で終了しました。
ただし2024年1月以降も、保存要件に従って保存できなかったことについて「相当の理由」があると所轄税務署長に認められ、かつ、データのダウンロードの求めと出力書面の提示・提出に応じられる場合には、保存要件を満たさない形でのデータ保存が認められる猶予措置があります。この場合もデータ自体の保存は必要で、紙に出力した書面だけを保存する方法は認められません。

(出典:国税庁「電子帳簿保存法一問一答【電子取引関係】」) 

区分を誤った保存を続けると、場合によっては青色申告の承認取り消しなどの税務リスクにつながるおそれがあります(詳しくは第7章)。「どの形式で授受したか」を基準に正確に仕分けましょう。 

3-2.見積書は入力期限のない「一般書類」

スキャナ保存では、対象書類が「重要書類」と「一般書類」の2つに区分されます。重要書類は契約書や請求書など、資金や物の流れに直結・連動する書類です。一方、見積書は資金や物の流れに直結・連動しない「一般書類」に分類されます。 

両者は、データ化の際に求められる要件が異なります。 

区分

主な書類

入力期間

画質

重要書類

契約書・請求書・領収書・納品書など

受領後おおむね7営業日以内。事務処理規程で業務処理サイクルを定めている場合は最長2カ月+おおむね7営業日以内

カラー

一般書類

見積書・注文書・検収書など

制限なし(適時に入力できる)

グレースケール可

重要書類は取引金額や支払いの事実に直結するため、改ざん防止の観点から入力期限が厳格に定められています。見積書は取引の成立前に授受される書類で、金額の確定や資金の流れには直結しません。そのため要件が緩和されており、過去にさかのぼってのデータ化も可能です。 

ただし、こうした緩和(適時入力・グレースケールでの保存)を適用するには、電磁的記録の作成および保存に関する事務手続を明らかにした書類(事務の責任者を定めたもの)を備え付ける必要があります。(出典:電子帳簿保存法施行規則第2条第7項、国税庁「電子帳簿保存法一問一答【スキャナ保存関係】」) 

3-3. 電子保存で守るべき要件2つ:真実性と可視性の確保

スキャナ保存・電子取引データ保存のいずれも、柱となる要件は2つです。ただし、具体的な内容は保存区分によって異なります。 

①「真実性の確保」(改ざん防止)

真実性の確保とは、保存した電子データが後から改ざんされていないと証明できる状態を指します。スキャナ保存では、タイムスタンプの付与と、訂正・削除履歴が残る(または訂正・削除できない)システムでの保存が基本です(システムによってはタイムスタンプ不要)。電子取引データ保存では、タイムスタンプの付与、同様のシステムでの授受・保存、訂正・削除の防止に関する事務処理規程の制定・遵守のいずれかで対応します。事務処理規程で対応できるのは電子取引データ保存のみです。 

②「可視性の確保」(検索機能・見読性)

可視性の確保とは、保存したデータを税務調査などの際に検索し、画面や書面ですぐ確認できる状態を指します。いずれの区分でも、原則として「取引年月日・取引金額・取引先」の3項目で検索できる状態にしておく必要があり、ファイル名の規則化や索引簿での管理が代表的な方法です。ただし電子取引データ保存に限り、一定の条件を満たす事業者は検索要件が不要になります。 

3-4. 検索要件が不要になるケース

電子取引データの保存では、次のいずれかに該当し、税務調査時にデータのダウンロードの求めに応じられる場合、検索要件のすべてが不要になります。 

  • 判定期間に係る基準期間(通常は2年前の年・事業年度)の売上高が5,000万円以下の保存義務者

  • 電子取引データを出力した書面を、取引年月日その他の日付および取引先ごとに整理して提示・提出できる保存義務者

 売上高の基準は、2024年1月1日以後の電子取引から、従来の1,000万円以下から5,000万円以下に拡大されました。 

ただし、これは「検索機能を備えなくてよい」という制度上の緩和にとどまります。実務ではファイル名の付け直しや索引簿の更新といった手作業の負担が残ります。書類の件数が増えるほど、こうした作業の量が増え、入力漏れや表記ゆれも起きやすくなります。検索できる状態を安定して保つには、管理方法をあらかじめ決めておくことが必要です。(出典:国税庁「電子帳簿保存法一問一答【電子取引関係】」) 

3-5. メールで受け取った見積書の扱い

見積書がファイルとして添付されておらず、「品名・数量・単価・金額」などの見積内容がメール本文に記載されている場合は、そのメール自体が「電子取引データ」となり、保存する必要があります。 

また、見積書が添付されていても、有効期限や値引き理由といった補足条件がメール本文に記載されているなら、メールをPDF化して残す、メールと添付ファイルを関連付けて管理するといった対応が望ましいでしょう。 

スレッド形式で見積書の修正が続いた場合は、最終的な合意内容がすぐに判別できるよう、最終確定時のメールを適切に保存しておきましょう。経緯の説明が必要になりそうな案件では、スレッド全体をPDF化して残す方法もあります。 

4. 見積書の保存要件を満たす運用方法

保存のルールを押さえたら、次は日々の業務でどう回すかです。システムを使わずに手作業で要件を満たす方法と、システムを活用する方法を順に見ていきます。 

4-1. システムを使わずに対応する最小構成

システムを導入せず、手作業で保存要件を満たすことも可能です。最小構成は次のとおりです。 

  • ファイル名の規則化:「YYYYMMDD_取引先名_見積書_金額.pdf」のように、取引年月日・取引金額・取引先を判別できる形式に統一する(検索要件に対応した基本形)

  • フォルダ設計:年度・取引先などの階層を決め、保存場所を固定する

  • 事務処理規程の整備:国税庁が公開するひな形をもとに、訂正・削除の防止に関する事務処理規程を定めて備え付ける

  • 索引簿の作成:Excelなどで取引年月日・取引金額・取引先を一覧化し、検索できる状態を保つ

 こうした方法で要件は満たせますが、書類の件数が増えるほど、ファイル名の付け直しや索引簿の更新に手間がかかります。担当者の異動で運用ルールが引き継がれず、形骸化してしまうケースも少なくありません。手作業の限界を感じたときが、システム活用を検討するタイミングです。 

4-2. システム活用で電帳法対応と業務効率化を両立

こうした手作業の負担を解消するには、電子帳簿保存法の保存要件に対応した文書管理システムの活用が有効です。導入により、法令対応と業務効率化を同時に進めやすくなります。 

例えば、AI-OCR搭載の文書管理サービス「PATPOST」では、アップロードした見積書などの書類をAI-OCRでデータ化し、電帳法テンプレートを使った項目抽出により「取引年月日・取引金額・取引先」といった検索要件に沿った管理が可能です。 

訂正・削除ができない電帳法対応キャビネットへの格納で真実性の担保を支援するほか、第三者機関によるJIIMA認証(電子取引ソフト法的要件認証・電帳法スキャナ保存ソフト法的要件認証)も取得しており、電子帳簿保存法の法的要件を満たした運用*をサポートします。(出典:国税庁「JIIMA認証情報リスト」) 

見積書から請求書まで、AI-OCRでデータ化した証憑をキャビネットで検索できる状態にできるため、「探す時間」の削減や手入力に伴うヒューマンエラーの防止にもつながります。 

*電子取引データ保存の場合は、別途、訂正・削除防止に関する事務処理規程の制定・遵守が必要となります。また、自動で抽出された情報について、修正対応が必要となる場合があります。

 5. 契約に至らない見積書の保存義務と要否の線引き

実務で最も判断に迷うのが、相見積もりなどで入手した「契約に至らなかった見積書」の扱いです。法令上の根拠を起点に、保存の要否をどう線引きすればよいか整理します。 

なお判断に迷ったときは、税務調査官に「なぜこの金額で取引したのですか」と聞かれた場面を想像し、その資料が説明に必要かどうかで考えてみてください。迷ったら保存しておくのが、リスク回避の観点からは安全です。 

5-1.保存の要否は「取引との関係」で決まる

保存の要否は「取引に関して受領・作成した書類かどうか」を起点に判断します。法人税法施行規則第59条は、注文書・契約書・送り状・領収書・見積書など、取引に関して相手方から受け取った書類の保存を定めています。自己が作成したこれらの写し(控え)も対象です。(出典:e-Gov「法人税法施行規則第59条」) 

したがって、発注に関連する見積書は、価格を決定した過程の根拠となるため保存が必要です。契約が不成立でも、その交渉に伴う支出の説明を補強する材料になることがあります。 

例えば失注した案件でも、商談のために会議費や交通費を支出していれば、その見積書は支出の目的や商談が実在したことを補強する資料になり得ます。 

つまり「事業の遂行に関係し、説明責任を果たすために必要か」が保存要否の判断基準です。 

5-2. 保存が不要となるケース

一方で、以下のようなケースは、一般的に保存義務がないと判断されます。 

  • 社内検討用:外部に提示せず、社内の試算のみに使用した資料

  • 単なる概算・試算:具体的な交渉に発展せず、市場価格を把握するためだけに取得した資料

  • 帳簿記載と無関係:その見積書がなくても、帳簿の正当性に一切影響を与えない場合

5-3. 実務で迷いやすいグレーゾーンと判断基準

契約に至らなかったケースを中心に、特に判断に迷いやすいものを以下の表にまとめました(形式別の保存方法は第2章の早見表をご参照ください)。 

ケース

保存の要否

判断のポイント

発注に至った見積書

必要

計上金額の直接の根拠になる

相見積もり

保存推奨

発注しなかった分も、採用先の価格妥当性を説明する材料になる。高額取引・随意契約・関係会社取引では特に重要

交渉に伴う支出(出張費・会議費など)が発生した案件の見積書

保存推奨

支出の事業関連性を補強する資料になる

外部に提示していない社内試算・概算

不要

「取引に関して受領・交付した書類」に当たらない

帳簿記載にも支出にも関係しない参考見積もり

不要

保存義務の対象外

 保存が必要かどうかの線引きは、次のように考えられます。 

  • 保存が必要なライン:取引が成立したもの、および、成立はしなかったが支出(交通費や会議費など)の正当性を証明するもの

  • 保存が不要なライン:取引が成立せず、その後の事業活動や支出に一切の関連性がないもの

 6. 見積書の変更・差し替え時の保存範囲 

見積書は交渉の過程で何度も改定されることがあります。「最終版だけ残せばよい」と考えがちですが、変更の経緯にも証憑としての価値があります。どこまで保存すべきか確認しましょう。 

6-1.最終版だけでなく条件が変わった修正版も残す

保存する範囲の基準は「取引事実を証明できる範囲」です。契約に至った最終確定版に加え、条件が大きく変わった場合は修正版(枝番)も保存しておきましょう。最新版のみを残して途中の枝番を破棄してしまうと、過去の経緯を説明できず会計処理の妥当性を疑われるリスクがあります。 

変更過程の保存には、法令遵守以上のメリットもあります。金額変更の経緯が残っていれば、架空発注や不正な利益調整がないことの説明に役立ちます。取引先との「言った・言わない」の争いでも、合意時点の条件を特定する証拠になります。 

一方で、すべての版を残そうとすると管理が煩雑になります。「金額や仕様の変更は別版として保存」「軽微な誤字修正は上書き可」など、どの範囲まで残すかの社内基準を設けておくことが重要です。 

6-2. 訂正・削除履歴の確保方法

「電子保存で守るべき要件2つ:真実性と可視性の確保」で解説した「真実性の確保」を満たすためにも、変更のプロセスを追える状態を維持しましょう。もっとも確実なのは、訂正・削除のログが自動で残るシステム(または訂正・削除できない)システムで管理する方法です。システムを利用せずに電子取引データを保存する場合は、タイムスタンプの付与、または訂正・削除の防止に関する事務処理規程の制定・遵守のいずれかで対応します。事務処理規程で対応する場合は、修正版を受け取るたびに上書きせず別ファイルとして保存し、旧版もアーカイブしておくといった運用を、規程に沿って徹底しましょう。なお、スキャナ保存では、電子取引データ保存とは真実性確保の要件が異なり、事務処理規程による方法は認められていません。タイムスタンプの付与や、訂正・削除履歴が確認できるシステムでの保存など、スキャナ保存の要件に沿って対応する必要があります。

6-3. バージョン管理の実務例

バージョンが増えても混乱しないよう、デジタル管理のルールを統一しておくと運用しやすくなります。

  • 命名規則:「YYYYMMDD_取引先名_見積書_v2.pdf」のように、4-1の基本形にバージョンを加えた発展形として、日付・相手先・バージョンの表記方法を固定する

  • 確定版フラグ:最終的な契約根拠となったファイルには「確定」「成約」などのタグを付け、検討段階のファイルと区別する

  • 承認フローとの連動:ワークフローシステムで「誰がいつ承認したか」のログを残し、証憑としての信頼性を高める

 訂正履歴の適切な管理は、法令遵守のみならず、社内の意思決定プロセスの適正化にもつながります。 

7. 電帳法に対応していない場合に起こりうること

保存要件を満たせていない場合に想定されるリスクを整理します。このうち②③については、違反の事実のみで直ちに処分が確定するものではなく、違反の程度や事情に応じて判断されます。 

①重加算税の加重措置
スキャナ保存したデータや電子取引データに関して隠蔽・仮装があった場合、これらに関して生じた申告漏れなどについて、重加算税が10%加重されます(電子帳簿保存法第8条第5項)。データの改ざんや不正な削除を疑われないよう、真実性を確保した保存体制が重要です。 

②青色申告の承認取り消し
保存要件の違反は、青色申告の承認取り消しの事由になり得ます。ただし国税庁は、違反の事実のみをもって直ちに取り消すのではなく、事務運営指針に基づき違反の程度などを踏まえて判断するとしています。 

③過去分の遡及対応
過去の電子取引データを紙のみで保存していた場合、さかのぼって要件を満たす形に整え直すことは容易ではありません。まずは現時点以降の保存フローを要件に沿って整えることを優先しましょう。そのうえで、過去分は破棄せず、求めがあれば提示できる状態で残しておくことが現実的な対応です。 

8. 見積書の保存に関するよくある質問

電帳法における見積書の扱いについて、よくある質問をまとめました。基本事項のおさらいにもご活用ください。 

Q1. 見積書は必ず7年間保存が必要ですか

A. 原則として、法人は7年間の保存義務があります。法人税法に基づき、帳簿およびその取引に関連する書類(証憑)は、事業年度の確定申告書の提出期限の翌日から7年間の保存が定められています。ただし、欠損金の繰越控除を受ける場合は、最長10年間の保存が必要になるケースがあるため注意しましょう(詳しくは「保存期間は原則7年(欠損金がある場合は最長10年)」をご覧ください)。 

Q2. 個人事業主にも見積書の保存義務はありますか

A. 個人事業主にも保存義務があります。青色申告の場合、見積書などの取引関係書類の保存期間は原則5年です(帳簿や決算関係書類は7年)。白色申告でも、業務に関して作成・受領した書類は5年間の保存が必要です。法人とは期間が異なる点に注意しましょう。 

なお、電子取引データの保存義務と保存要件は、個人事業主にも法人と同様に適用されます。また、消費税の仕入税額控除に係る帳簿・請求書などは7年間の保存が必要なため、実務上は7年に揃えて運用するのが安全です。 

Q3. メール本文のみの見積も保存対象ですか

A. 取引内容が具体的に記載されていれば保存対象です。PDFなどの添付ファイルがなく、メールの本文中に「品名・数量・単価・金額」といった見積内容が書かれている場合、そのメール自体が「電子取引データ」となります(詳しくは「メールで受け取った見積書の扱い」をご覧ください)。 

Q4. Excelで作成した見積書をPDF化した場合はどうなりますか

A. そのPDFをメールなどで授受すれば「電子取引」に該当します。紙に出力して保存することは認められず、電帳法の要件に沿った電子データ保存が必要です。また、メールなどで授受せず自社で一貫してパソコンで作成した見積書の控えは、電子帳簿等保存の区分でそのまま電子データとして保存できます。 

Q5. 契約不成立案件の見積書は削除してよいですか

A. 単なる概算であれば削除しても差し支えありません。しかし、相見積もりをはじめとする「取引の適正性を証明する役割をもつもの」は、証拠として保存期間中残しておくのが安全です(判断基準は「契約に至らない見積書の保存義務と要否の線引き」をご覧ください)。 

Q6. 紙で受け取った見積書をスキャンしたら、原本は破棄してよいですか

A. スキャナ保存の要件を満たして保存すれば、原本の破棄が認められます。見積書は一般書類のため、入力期間の制限を受けない適時入力やグレースケールでの保存も認められていますが、その場合は事務手続を明らかにした書類の備え付けが必要です。要件を満たさずにデータ化した場合は、紙の原本の保存が必要です。 

Q7. FAXで届いた見積書は電子取引に当たりますか

A. 受け取り方によって扱いが分かれます。紙に出力して受け取る一般的なFAXは、紙で受領した書類として扱われます。一方、ペーパーレス化されたFAX機能を持つ複合機などでデータとして受信した場合は電子取引に該当し、電子データのままの保存が必要です。

Q8. 見積書を保存していなかったことに気づいたら、どうすればよいですか

A. 気づいた時点で、取引先への再発行依頼やメールの再取得など可能な範囲で復元しましょう。あわせて、今後の分を要件に沿って保存できる体制を整えることが重要です。保存漏れの事実のみで直ちに重い処分につながるわけではありませんが、放置はリスクを高めます。 

Q9. 見積書のデータは、クラウドサービス上に置いたままでよいですか

A. 保存場所がクラウドであること自体は問題ありません。ただし、真実性と可視性の要件を満たす必要があります。訂正・削除履歴が残る仕組みと、検索できる状態、税務調査時にダウンロードの求めに応じられる状態を確保しましょう。 

9.まとめ

電帳法における見積書の扱いは、「契約に至ったかどうか」「発行側か受領側か」「どの形式で授受したか」によって判断が分かれます。重要なのは、「取引事実との関連性」を軸に保存の要否を判断し、真実性と可視性を満たした保存体制を構築することです。 

制度対応を義務で終わらせず、証憑の探しやすさと内部統制を同時に見直すことが、経理部門にとって現実的な次の一手になります。AI-OCR搭載の文書管理サービス「PATPOST」は、見積書をはじめとする証憑のデータ化・検索・管理を支援し、電子帳簿保存法の法的要件を満たした運用*をサポートします。見積書の保存フローの見直しとあわせて、導入を検討してみてはいかがでしょうか。 

*電子取引データ保存の場合は、別途、訂正・削除防止に関する事務処理規程の制定・遵守が必要となります。

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プロフィール

監修:内山 智絵
公認会計士・税理士・ファイナンシャルプランナー
大学在学中に公認会計士試験に合格し、卒業後は大手監査法人の地方事務所で上場企業の法定監査などに10年ほど従事。出産および育児をきっかけに退職後、会計事務所を開業。中小監査法人での監査業務に加え、起業女性の会計や税務サポートなどを中心に行っている。

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