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溜まった領収書の入力作業に、現場が疲弊していないでしょうか。領収書の処理には「書類の収集」「担当者とのやりとり」「データの入力」「保管」など手間のかかる業務が多く、従業員の負担につながるケースが少なくありません。
こうしたアナログで属人化しやすい作業をデジタル化する技術の代表例が「OCR」です。OCRを活用すれば、領収書に記載された日付や金額、取引先などの情報を自動で読み取り、テキストデータに変換できます。
この記事では、OCRの基本と領収書業務に活用するメリット、AI-OCRと従来のOCRの違いを解説します。あわせて、インボイス制度への対応やシステム選定のポイントも紹介します。
OCR(Optical Character Recognition=光学文字認識)とは、画像や文書に含まれる文字を認識し、テキストデータに変換する技術です。スキャナやスマートフォンのカメラで領収書を取り込むと、記載された文字を検索や編集が可能なデータとして扱えるようになります。
領収書の処理業務では、日付・金額・取引先といった情報を会計ソフトや経費精算システムへ入力する作業が発生します。OCRはこの「読み取り」と「入力」を自動化する入り口となる技術で、経理業務の効率化に幅広く活用されています。
なお、近年はAIと組み合わせて読み取り精度を高めた「AI-OCR」も登場しています。AI-OCRの特徴は「3. AI-OCRと従来のOCRの違い」で詳しく解説します。
【関連記事】AI-OCRとは?従来のOCRとの違い、メリットを解説

OCRの活用は、入力作業の負担軽減にとどまらず、書類の管理方法や法対応の進め方にも良い影響をもたらします。とくに領収書は、従業員が立て替えた経費の精算に伴って発生し、枚数も形式もばらつきやすい書類です。ここでは、領収書の処理業務における代表的な3つのメリットを解説します。
領収書の処理業務では、入力作業の「工数」が主な課題になります。とくに月末・月初は従業員からの経費精算の申請が集中します。経理担当者は、提出された領収書と申請内容を1件ずつ突き合わせ、金額や日付を確認しながら入力する作業に追われます。立替払いや仮払いが混在すると、確認の手間はさらに増えます。
大量の領収書を1枚ずつ「見る」「打つ」という作業は、枚数に比例して時間を要し、その間はほかの業務に着手できません。OCRを導入すると、この入力工程の多くをシステムが代替します。人の仕事は「正しく読み取られているか」の確認が中心になるため、データ化の速度が上がり、処理件数が増えても対応しやすくなります。
また、手作業で起こりやすい「0」の数え間違いや桁ずれといった入力ミスの防止にも役立ちます。修正や差し戻しといった手戻りが減るため、担当者の心理的な負担も軽くなります。
紙の領収書は、日付・金額・取引先といった条件での横断的な検索ができません。1枚の領収書を探すために、ファイルを1枚ずつめくり続けるような非効率な作業が発生しがちです。在宅勤務などで勤務拠点が分かれていると、原本の受け渡しが完了するまで業務が止まることもあります。
OCRで領収書をデータ化すれば、キーワードやフィルタによる検索で目的の書類をすぐに見つけられます。クラウド型の文書管理システムを併用すると、各担当者がアップロードした領収書を経理担当者が一元管理できます。場所を問わず受け渡しが完了するため、拠点や部署をまたいだ証憑(しょうひょう=取引の事実を証明する書類)の収集にも対応しやすくなります。
スマートフォンでの撮影提出に対応したシステムであれば、従業員は出張先や外出先からも領収書を提出できます。紙の原本が経理に届くのを待たずに処理を始められるため、経費精算の締め作業の前倒しにもつながります。
なお、データ化した後も、監査対応などに備えて一定期間は紙の原本を保管しておく企業が少なくありません。保管スペースの削減効果は、電子保存の運用が定着し、原本を破棄できる体制が整ってから段階的に表れると考えるのが現実的です。
電子帳簿保存法とは、帳簿や領収書などの国税関係帳簿書類を電子データで保存する際のルールを定めた法律です。紙で受け取った領収書は、紙のまま保存するのが原則です。原本を破棄して電子データのみで保存したい場合は、同法の「スキャナ保存」の要件を満たす必要があります。
OCR自体が法対応を実現するわけではありません。しかし、領収書のデータ化を進めるうえで電子帳簿保存法への対応は避けて通れないため、システム選びとあわせて検討することが重要です。スキャナ保存の要件に対応したシステムを選べば、法的要件を満たす運用を構築しやすくなります。
判断材料になるのが、JIIMA認証のひとつである「電帳法スキャナ保存ソフト法的要件認証」です。公益社団法人日本文書情報マネジメント協会(JIIMA)が、法的要件を満たすと判断したソフトウェアを認証する制度で、法令対応を確認する手間を減らせます。検索性の高いシステムであれば、税務調査の際の対応もスムーズになるでしょう。
【関連記事】電子帳簿保存法における3つの保存方法と対象の帳簿・書類について紹介!
OCRには、従来のOCRと、AI技術を活用したAI-OCRがあります。両者は文字を読み取るアプローチが異なり、得意分野にも差があります。それぞれの特徴を確認したうえで、違いを比較表で整理します。
従来のOCRは、「どの位置にどの項目が記載されているか」をあらかじめ定義し、文字の形をパターンと照合して認識する仕組みです。定義したフォーマットどおりの帳票であれば、安定した読み取りが期待できます。
一方、この仕組みでは、レイアウトが取引先ごとに異なる「非定型帳票」の処理が困難です。フォーマットが変わるたびに、読み取り位置の定義を作り直す手間が発生するためです。また、パターンから外れやすい手書き文字や特殊なフォントは誤認識が起こりやすく、人による補正が必要になるケースが少なくありませんでした。
AI-OCRは、ディープラーニング(大量のデータから特徴やルールを自動的に学習する手法)を活用したOCRです。文字の形だけでなく、文脈や周辺の情報も手がかりに項目を推定します。そのため、事前のフォーマット定義がなくても非定型帳票を読み取りやすく、手書き文字や特殊フォントにも柔軟に対応でき、補正の手間を抑えられます。
さらに近年は、生成AIを組み合わせたシステムも登場しています。読み取りに加えて「項目の抽出」「表記ゆれの統一」「内容の分類」といったデータ整形まで支援できる点が特徴です。ただし、最終的な内容の判断は人が行う前提となります。
従来のOCRとAI-OCRの主な違いは、以下の表のとおりです。
比較項目 | 従来のOCR | AI-OCR |
|---|---|---|
読み取りの仕組み | 事前定義したフォーマットとの照合 | AIが文脈や周辺情報から項目を推定 |
非定型帳票への対応 | フォーマットごとに事前定義が必要 | 事前定義なしでも対応しやすい |
手書き文字・特殊フォント | 誤認識が起こりやすい | 高い精度での読み取りが期待できる |
読み取り後の処理 | 人による確認・補正が中心 | データ整形まで自動化できる製品もある |
向いている業務 | 同じ形式の帳票を大量に処理する業務 | 取引先ごとに形式が異なる帳票の処理 |
フォーマットが取引先ごとに異なる領収書の処理では、非定型帳票に強いAI-OCRのほうが適しているといえるでしょう。
領収書のデータ化には、スマートフォンの無料OCRアプリから、企業向けの有料サービスまで幅広い選択肢があります。大きな違いは、読み取り精度と、読み取った後のデータを業務で活用するための機能です。
比較項目 | 無料のOCRアプリ | 有料のビジネス向けサービス |
|---|---|---|
主な用途 | 個人で手軽に試す | 組織での継続的な業務利用 |
処理枚数・精度 | 処理枚数に上限がある場合が多い | 業務量に応じて処理できる。業務利用を想定し、読み取り結果の確認・修正機能を備えた製品が多い(精度は製品・帳票により異なる) |
電子帳簿保存法の要件を満たす保存機能 | 対応していない製品が多い | 対応製品を選べる |
会計システムとの連携 | 基本的になし | CSV出力・API連携に対応する製品がある |
セキュリティ・サポート | 限定的 | 契約に基づき提供 |
企業の経費処理として領収書を扱うなら、法対応・検索性・セキュリティ・サポート体制まで含めて設計されたビジネス向けサービスを選ぶのが現実的です。無料期間のあるサービスで、自社の領収書を使って読み取り精度を確認してから導入を判断するとよいでしょう。

ここでは、AI-OCRを活用した一般的な運用の流れを紹介します。AI-OCRを導入すると、領収書の処理は次の4つのステップで進むようになります。
スマートフォンのカメラやスキャナで領収書を取り込み、クラウドへアップロードします。AI-OCRは文脈から項目を推定するため、「日付はここ、金額はここ」といった事前設定を行う必要はありません。
読み取ったデータを自動で整形する製品もあります。例えば、「(株)」と「株式会社」の表記をそろえるといったデータクレンジングです。支払い内容から「会議費」「旅費交通費」といった勘定科目の候補を提示するシステムもあり、手作業で打ち直す手間を抑えられます。最終的な科目の判断は担当者が行う運用が前提です。
整えられたデータは、自社の運用スタイルに合わせて活用できます。CSVやExcelでの出力は、手元で内容を確認・修正したり、既存の社内システムへ取り込んだりする場合に適しています。
また、会計ソフトやERPとのAPI連携に対応したシステムであれば、データの書き出し・読み込みという手作業自体を減らせます。転記そのものが減るため、入力ミスや計上漏れが起こりにくくなります。会計データが日次で更新される状態を保ちやすくなる点もメリットです。
読み取ったデータと画像は、電子帳簿保存法のスキャナ保存の要件を満たす形で保存します。要件は、システムで満たすものと、社内の運用で満たすものに分かれます。
【システムで満たす主な要件】
画質の確保(解像度200dpi以上、赤・緑・青それぞれ256階調以上(24ビットカラー)での読み取り)
タイムスタンプの付与(または訂正・削除の履歴が残るシステムへの格納)
検索性の確保(取引年月日・取引金額・取引先で検索できること)
【運用で満たす主な要件】
入力期間の制限(受領後おおむね7営業日以内。業務処理サイクル方式を事務処理規程で定めている場合は、最長2カ月+おおむね7営業日以内)
帳簿との相互関連性の確保(領収書などの重要書類が対象)
システム関係書類(操作説明書・事務処理規程など)の備え付け
システム側の要件は製品選びで、運用側の要件は社内ルールの整備で満たす、と切り分けて考えると準備を進めやすくなります。
【関連記事】電子帳簿保存法のスキャナ保存とは?国税庁が規定する要件と、改正で緩和されたルールを改めて解説

経費精算で仕入税額控除を受けるには、インボイス制度への対応も欠かせません。インボイスとして扱える領収書の要件と、OCRで読み取る際の注意点を解説します。
なお、適格請求書発行事業者以外から受け取った領収書についても、経過措置により仕入税額相当額の一定割合を控除できます。控除割合は2026年9月30日までの課税仕入れが80%、2026年10月1日以後は70%となり、その後も段階的に引き下げられる予定です。領収書をデータ化する際に登録番号の有無を記録しておくと、控除割合の切り替え時に対象取引を抽出しやすくなります。(出典:国税庁「令和8年度税制改正特集」)
【関連記事】【インボイス制度対応】立替払いの精算方法について解説
適格請求書(インボイス)の要件を満たした領収書は、仕入税額控除の対象となります。記載が必要な項目は、次の6つです。
適格請求書発行事業者の氏名又は名称及び登録番号
取引年月日
取引内容(軽減税率の対象品目である旨)
税率ごとに区分して合計した対価の額(税抜き又は税込み)及び適用税率
税率ごとに区分した消費税額等*
書類の交付を受ける事業者の氏名又は名称
なお、小売業や飲食店業など不特定多数の者と取引する一定の業種では、宛名などの記載を省略した「適格簡易請求書(簡易インボイス)」の交付が認められています。
*「税率ごとに区分した消費税額等」の端数処理は、一の適格請求書につき、税率ごとに1回のみと定められています。インボイスの要件を満たした領収書をAI-OCRで読み取れば、登録番号・日付・金額といった項目を自動で抽出できます。1枚ずつ手入力する手間は大きく減りますが、制度上の正しい判断には人による最終確認のフローが欠かせません。
例えば、「その取引が本当に軽減税率の対象か」という法的な判断では、AIが誤判定を起こすリスクがあります。また、登録番号(T+13桁)を読み取れても、その番号が公表情報に存在するかまで照会できるシステムは限られます。照会機能を備えたシステム、または国税庁の適格請求書発行事業者公表サイトと連携できるシステムを選ぶと、確認の手間を減らせます。AI-OCR搭載の文書管理サービス「PATPOST」も、同サイトとのAPI連携により読み取った登録番号を照会できます。
さらに、宛名の省略が認められる簡易インボイスに該当するかの判定など、業種や取引形態によって確認すべき項目は変わります。OCR単体の性能だけでなく、読み取り後の会計業務とスムーズにつながるかを重視してシステムを選ぶことが大切です。
経費精算では、インボイスの交付を受けられない取引も日常的に発生します。次のような取引は、一定の事項を記載した帳簿の保存のみで仕入税額控除が認められています。
3万円未満の公共交通機関(船舶・バス・鉄道)による旅客の運送
従業員に支給する、通常必要と認められる出張旅費・宿泊費・日当・通勤手当
3万円未満の自動販売機・自動サービス機からの商品の購入
また、基準期間の課税売上高が1億円以下(または特定期間の課税売上高が5,000万円以下)の事業者は、税込1万円未満の課税仕入れについて、帳簿の保存のみで仕入税額控除を受けられる「少額特例」を利用できます。
これらはいずれも「OCRで自動判定できる範囲」ではなく、人が取引の性質を見て判断する領域です。読み取ったデータに交通費や自販機購入が含まれる場合は、帳簿への記載事項が要件を満たしているかを別途確認する運用にしておきましょう。

OCRやAI-OCRの導入で、領収書をはじめとする証憑の処理がどの程度変わるのか。ここでは、領収書に限らず、形式のそろわない証憑を扱う業務の例として、「PATPOST」を導入した企業の実例を紹介します。あわせて、自社で削減できる時間を見積もる考え方も整理します。
※本章で紹介する事例の数値は、各社の特定業務における実測値または見込み値です。削減幅は業務内容や運用によって異なります。
発電プラントなどの調達業務を手がける部門では、取引先ごとに形式が異なる見積書の内容をExcelに転記する作業に、1案件あたり1〜2時間を要していました。
「PATPOST」の導入後は、この作業が数十分に短縮され、担当者は価格交渉や契約条件の検討に時間を割けるようになっています。領収書と同じく、形式がそろわない証憑を扱う業務の例です。
参考:購買戦略に集中するための選択──転記作業の心理的負担を削減したPATPOST導入
情報通信機器などを扱う会社では、電子帳簿保存法の要件を満たして書類を保管するために、1件あたり約4分のファイル名付け替え作業が発生し、年間約4,000時間を費やしていました。
「PATPOST」への切り替えにより、この作業は年間約1,000時間(約75%減)となり、要件を満たせず未処理のまま溜まっていた帳票も2カ月で解消しています。証憑を法対応の状態で保管する運用の例です。
参考:「ファイル名付け替え作業」年4,000時間を75%削減。減価償却途中でも乗り換えられた全プロセスと意思決定基準
他社の事例はあくまで参考値です。稟議に使える数字にするには、自社の実測値から見積もる必要があります。次の手順で概算できます。
現状を実測する:領収書の「入力」「確認」「検索」にかかっている時間を、それぞれ1週間分だけ記録します。月間の処理枚数もあわせて数えます。
現状コストを計算する:月間処理枚数 × 1枚あたりの現行処理分数 ÷ 60 × 時間単価。例えば月2,000枚・1枚5分・時間単価3,000円なら、月約50万円に相当します。
無料期間で導入後の値を取る:同じ帳票を実際にアップロードし、読み取り結果の確認・修正を含めた処理時間を測ります。ここで得た実測値を、上と同じ式に当てはめます。
差額と回収期間を出す:削減効果=現状コスト − 導入後コスト。回収期間=初期費用 ÷ 年間コスト削減額。
実測した数字であれば、社内の稟議でも根拠として示しやすくなります。検索時間や差し戻しの手戻りなど、見落としがちな工程まで含めて記録しておくと、実態に近い試算になります。
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AI-OCRの導入では、機能の高さだけでなく、導入後に従業員が安心して使い続けられるかまで含めた検討が欠かせません。ここでは、システムを選ぶ際の4つのチェックポイントと、製品カテゴリの違いを解説します。
まずは、自社で頻出する形式の領収書をデモや無料期間で実際に読み取り、精度を確認しましょう。特に以下の点は、安心してシステムを使えるかを左右します。
飲食店の手書き領収書を正確に読み取れるか
海外出張時の外国語の領収書に対応しているか
レシートタイプやA4サイズなど、異なる形式でもサイズ判別や分割処理ができるか
非定型帳票の読み取りに強いシステムなら、取引先ごとのフォーマットの違いにも柔軟に対応できます。AI-OCR搭載の文書管理サービス「PATPOST」も、手書きや外国語を含む非定型文書からの項目抽出に対応しています。自社の領収書で実際に読み取れるかは、無料期間やデモで確認してみてください。
高機能なAI-OCRでも、操作が複雑だと現場に定着しない恐れがあります。選定の際は、マニュアルを読み込まなくても操作の流れが把握できる、直感的な操作性を備えているかが鍵になります。
導入後のミスマッチを防ぐには、デモや無料期間を利用して、現場担当者に実際の業務フローを再現してもらうのが効果的です。その際は、以下のポイントをヒアリングしましょう。
マニュアルへの依存度:説明書を読み込まなければ進められない箇所はなかったか。画面上の案内だけで作業を完了できたか
不明点の有無:操作中に「次に何をすればよいか」と迷う場面や、戸惑いを感じた機能はなかったか
日常業務への適合性:「領収書を10枚アップロードして、会計ソフトに取り込む形式まで書き出す」といった日常の作業を、ストレスなく完了できるか
現場の意見を取り入れ、「これなら今の業務が楽になる」と従業員が実感できる製品を選ぶことが、スムーズな導入と定着につながります。
AI-OCRで読み取ったデータは、会計ソフトや経費精算システムに取り込んで初めて業務に生かせます。データ化した後の使い道を見据えて、既存システムとの連携方法を確認しておきましょう。
連携方法は、CSVファイルを介した取り込みと、APIによる自動連携の2つに大別されます。CSV連携は多くのシステムで対応しやすい一方、書き出し・読み込みの手作業が残ります。API連携ならその手作業自体を減らせますが、対応の可否や追加費用はシステムごとに異なります。
自社で使用中の会計ソフトとの連携実績や、連携にかかる開発費・オプション費用まで含めて確認しておくと、導入後のつまずきを防げます。
AI-OCRの導入検討では、費用対効果(投じたコストに対してどれだけの効果が得られるか)の見極めも欠かせません。導入にかかるコストが、現在発生している「目に見える人件費」や「目に見えない機会損失」(コア業務の停滞)を下回るかが判断基準になります。
費用対効果を算出する際は、以下のステップで進めるとスムーズです。
現状の工数を把握する:現在の入力や検索にどれだけの時間(人件費)がかかっているかを洗い出す
無料期間で実数値を算出する:無料期間中に実際の業務フローを再現し、導入後に削減できる時間の予測値を明確にする
トータルコストから回収期間を見積もる:導入・運用コストと削減できる工数を比較し、「何カ月で導入コストを回収できるか」という視点で選ぶ
なお、すべてのコストを正確に見積もるのは難しいため、少なくとも次の費用項目を把握し、概算で比較できる状態にしておきましょう。特に以下のコストは見落としがちです。
従量課金(処理件数の超過時の単価やID数など)
既存の会計システム・経費精算システムとの連携にかかる開発費
契約期間・更新時の価格変動の条件
サポート費用
「安さ」だけで選ばず、付随コストを含めた実質的な投資額を把握しておけば、導入後の「思っていたのと違う」というリスクを抑えられます。
ここまで個別製品のチェックポイントを見てきましたが、あわせて押さえておきたいのが製品カテゴリの違いです。
領収書のデータ化を担う製品には、大きく経費精算システムと文書管理サービスがあります。経費精算システムは、申請・承認・仕訳といったワークフローの処理が中心です。一方、文書管理サービスは、証憑の受け入れ、データ化、検索、法対応した状態での保管が中心です。
両者は必ずしも競合するものではなく、前後の工程を担う関係にあります。すでに経費精算システムを使っている場合でも、証憑のデータ化と保管の部分だけを文書管理サービスに任せられるため、既存システムを入れ替えずに始められます。
【関連ページ】「PATPOST」の機能一覧
領収書のOCR活用について、よくある質問に答えます。
A. AI-OCRを搭載した製品であれば、手書きの領収書でも実用的な精度での読み取りが期待できる場合があります。読み取り精度は製品や書類の状態によって異なるため、一律の数値では示せませんが、多くの製品が手書き文字の読み取りに対応しています。なお「PATPOST」では、手書きを含む非定型帳票を対象とした自社検証で、項目抽出の正答率が平均約96%となっています*。
ただし、文字のかすれや極端な崩れがあると誤読の可能性はあるため、最終確認は人の目で行う運用が推奨されます。合計金額・消費税額・日付・取引先名といった、会計処理に直結する項目を重点的に確認しましょう。AIの信頼度スコアが低いデータなどに絞って人が確認するフローにすると、工数を抑えつつ精度を担保できます。
*「PATPOST」提供元(オリックス株式会社)による実測値(電子文書・手書きスキャン文書を含む非定型帳票の項目抽出の正答率平均値)。書類の状態により結果は異なります。A. 電子帳簿保存法の「スキャナ保存」の要件を満たして保存すれば、原則として原本を破棄できます。要件の全体像は「5-4. ステップ4:要件を満たした状態で保存する」で整理しています。
破棄の際は、要件を満たしていることを確認する前に原本を捨てないこと、社内で定めた承認フロー(上長確認など)を経ずに破棄しないことが大切です。導入後も運用が安定するまでは慎重に対応し、電子保存の体制が確実に機能していると確認できてから破棄すると安心です。
A. 削減幅は帳票の種類や現行の運用によって異なるため、他社の実績をそのまま当てはめることはできません。「7-3. 自社で削減できる時間を見積もる方法」の手順で、月間処理枚数と1枚あたりの処理時間を実測し、無料期間で導入後の値を取ってから比較するのが確実です。なお、無料のOCRアプリと有料のビジネス向けサービスの違いは「4. 無料のOCRアプリと有料のビジネス向けサービスの違い」で解説しています。
A. スマートフォンで撮影した画像でも、要件を満たせます。国税庁の一問一答では、スマートフォンやデジタルカメラも、書面を電磁的記録に変換する入力装置に該当すれば「スキャナ」に含まれるとされています。ただし、解像度200dpi相当以上(A4サイズで約387万画素以上)、赤・緑・青それぞれ256階調(24ビットカラー)以上の要件を満たす必要があります。
撮影後は、受領からおおむね7営業日以内(業務処理サイクル方式なら最長2カ月+おおむね7営業日以内)に入力を完了させる入力期間の制限も同様に適用されます。(出典:国税庁「電子帳簿保存法一問一答【スキャナ保存関係】」令和8年7月 問5)
A. 受け取ったら早めにスキャンやスマートフォン撮影でデータ化するのが有効です。感熱紙は時間とともに印字が退色し、読み取りも目視確認も難しくなるためです。
スキャナ保存の要件(画質・入力期間など)を満たしていれば原本を破棄できますが、要件を満たしていることを確認する前に原本を捨てないよう注意してください。保存した画像は、文字が判読できる状態かも確認しておきましょう。
領収書のデータ化は、単なる入力作業の効率化にとどまりません。証憑の一元管理や検索性の向上といった、バックオフィス業務全体の質を高める取り組みです。OCRを適切に活用すれば、入力ミスの防止や管理コストの抑制に加え、人材をコア業務に振り向ける体制づくりにもつながります。
データ化を実現する手段は、多機能な経費精算システムだけではありません。専用システムの導入にハードルの高さを感じる場合は、証憑の電子保存やデータ化に特化した文書管理サービスを活用する選択肢もあります。
AI-OCR搭載の文書管理サービス「PATPOST」は、生成AI-OCRにより、手書きや外国語を含む非定型帳票から必要な項目を抽出できる点が特長です。「AI-OCRの特徴」で触れた、生成AIによるデータ整形の流れを製品として取り入れています。
JIIMA認証(電子取引ソフト法的要件認証・電帳法スキャナ保存ソフト法的要件認証)も取得しており、電子帳簿保存法の法的要件を満たす運用を構築しやすいため、法対応と業務効率化を同時に進めたい企業に向いています*1。
法人プランでは1カ月の無料期間が用意されています*2。まずは自社の領収書でどの程度読み取れるか、試してみてはいかがでしょうか。
*1 JIIMA認証はソフトウェアが法的要件を満たすことの認証であり、法対応の完了を保証するものではありません。スキャナ保存では入力期間の制限の遵守、帳簿との相互関連性の確保、システム関係書類等の備付けなど、運用側で満たすべき要件が別途あります。また、「PATPOST」で電子取引データを保存する場合は、別途、訂正・削除防止に関する事務処理規程の制定・遵守が必要となります。
*2 契約期間は1年となります。初年度の解約無料期間を除く契約期間中の解約は不可となります。初年度(解約後に再契約した場合の初年度を除きます。)は無料期間終了日の翌日に11カ月分のご請求が発生します。
プロフィール

監修:末永 寛(すえなが ひろし)
税理士
一般企業における経理事務を約25年経験した後、大手税理士法人勤務を経て税理士事務所を開業。フリーランス・中小企業専門の税理士として、税務業務のみならず、将来の企業運営も含めた経営サポート業務を提供。また、近年の電子帳簿保存法やインボイス制度への対応も含めたITツールの導入も積極的にサポートしている。
監修範囲:本記事の税務および法令に関する記述について
<参考URL>
国税庁「No.6625 適格請求書等の記載事項」
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shohi/6625.htm
国税庁「消費税の仕入税額控除制度における適格請求書等保存方式に関するQ&A
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/zeimokubetsu/shohi/keigenzeiritsu/pdf/qa/01-01.pdf
国税庁「電子帳簿保存法一問一答【スキャナ保存関係】」令和8年7月
https://www.nta.go.jp/law/joho-zeikaishaku/sonota/jirei/pdf/0026007-006_03.pdf
国税庁「電子帳簿保存法特設サイト」
https://www.nta.go.jp/law/joho-zeikaishaku/sonota/jirei/tokusetsu/index.htm
公益社団法人日本文書情報マネジメント協会「JIIMA認証制度」
https://www.jiima.or.jp/certification/
PATPOST「PATPOSTの機能」
https://patpost.jp/feature
国税庁「令和8年度税制改正特集」
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/zeimokubetsu/shohi/keigenzeiritsu/invoice-review/index.htm
国税庁「No.6498 適格請求書等保存方式(インボイス制度)」
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shohi/6498.htm
PATPOST導入事例
https://patpost.jp/cases/aiocr_case_long_0010
https://patpost.jp/cases/aiocr_case_long_0011
PATPOST公式サイト
https://patpost.jp/
*記事の内容は、記事公開日時点の情報です。現在とは異なる場合があります。
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