
協栄産業株式会社
規模
: 500~999人
業界
: 卸売業
導入前の課題
• 作業時間:年4,000時間
• 作業負担:25人月
• 電帳法の要件を満たした状態で保管できていない帳票(未処理帳票):全社推定8,000件で経営課題化
• 専門人材が単純作業に時間を取られる
PATPOSTを選んだ理由
• ファイル名付け替え不要で、格納がシンプル
• 既製品として完成度が高く、すぐに使える(AI-OCR標準)
• 改善姿勢とロードマップの透明性が高い
導入の成果
• 作業時間:年1,000時間(3,000時間削減)
• 作業負担:6.25人月(75%削減)
• 未処理帳票:導入後2カ月で全社ゼロとなり経営課題を解消
• 専門人材が単純作業から解放され、本来の業務に集中できる
• 社長賞受賞
※本文中の「電帳法」は 電子帳簿保存法(電帳法) を指します
2023年、電帳法対応で導入したシステムが、現場の負担を増やしていました——。協栄産業株式会社は「1件4分」のファイル名付け替え作業を、運用変更ではなく“システム入れ替え”で解決。減価償却途中でも決断できた理由と、社内を動かした数字・合意形成の全プロセスを紹介します。

2023年に同社が導入したシステムでは、書類を格納するために詳細なファイル名を付ける必要がありました。
「ファイル名が検索要件にも振り分け先にもなるので、要素をたくさん入れる必要がありました。どんどん増えてタイトルが長くなり、専用マクロを作っていました」(コーポレート本部 総務部 総務課 専門課長 福田さま)

実際の作業フローは、次のとおりです。
PDFファイルを受領
「事業部名_部門名_処理区分_取引先名_金額_日付...」をすべて含めるよう、専用マクロでファイル名を変換
指定フォルダに格納
自動振り分けを確認

この一連の作業に、1ファイルあたり約4分を要していました。月5,000件を処理する場合、全社で約333時間。年間換算では約4,000時間が、この作業に費やされていた計算になります。
この煩雑な作業は、電帳法の要件を満たした状態で保管できていない帳票(未処理帳票)の蓄積も引き起こしていました。
「一番多かった部署では1,300件ほど溜まっていました。全社で見ると、推定8,000件以上あったと思います」(コーポレート本部 経営企画部 業務プロセス改善課 課長 山﨑さま)

さらに課題だったのは、人材の使われ方でした。
「Excelとマクロに詳しい社員がいて、その人の1日がこの作業に取られていました。本来の業務に集中してもらいたい人材の時間が使われていました」(山﨑さま)
この状況は、経営層からも問題視されました。
「未処理の書類が多かったので、経営層から『未処理の書類は必ずなくしなさい』と指示が出て、約2カ月で対応するように、という話がありました」(福田さま)
電帳法対応は、経営課題となっていました。
では、なぜこのような運用になってしまったのでしょうか。
「前システムは管理側目線で入れられたので、現場の不満がありました」(山﨑さま)
2022〜2023年は、電帳法対応のラッシュ期でした。多くの企業が「期限に間に合わせる」ことを最優先していて、同社も同様でした。現場の使い勝手まで十分に検討する時間的余裕がなかったのです。
実際に運用を始めてみると、現場の負担は想定以上に大きなものでした。そして、その負担は日を追うごとに積み重なっていきました。
2024年、同社は生成AI活用のワーキンググループ(8名)を立ち上げました。営業・管理・アシスタント・システムなど部門横断のメンバーで構成されました。
「会社全体で生成AIを活用していこう、という話が持ち上がりました。業務効率化や、新しい分野で何ができるかを手探りで始めたのがきっかけです」(山﨑さま)
最初に全社アンケートを実施したところ、回答の1位は「インボイス対応に時間がかかりすぎる」でした。ただ、実務内容を深掘りすると、ボトルネックの中心は帳票のファイル名付け替え作業(電帳法対応の運用)にあり、ここを解消する必要があると分かりました。
当初、ワーキンググループはこの課題の解決策として、既存システムへの機能追加を検討しました。システムは導入から3年、減価償却も終わっていません。
「入れ替えは正直、現実的ではないと思っていました」(山﨑さま)
そこで、AIベンダーに相談して、ファイル名を自動で生成するAI機能を既存システムに追加できないかと検討しました。
フルカスタム開発:一から開発してもらう
セミカスタム:既製品を既存システムと連携させる
しかし、いずれも開発費は想定より高額でした。さらに、費用だけでなく検討過程にも不安がありました。
「開発だと、導入が決まってもすぐ使えるわけではない。開発期間もかかる。AI知識が社内にあまりない中で、仕様を正しく伝えられるかも不安でした」(山﨑さま)
そんな中、転機になったのはAI関連の展示会でした。
「展示会でPATPOSTの説明を聞き、使い勝手が良さそうで、『システムを入れ替えるという選択肢もあるのでは』という発想に変わりました」(山﨑さま)
それまで「入れ替え」は選択肢にありませんでしたが、既製品の完成度を目の当たりにして考えが変わりました。
カスタム開発の場合
開発期間:6カ月〜1年
コストが高くなりやすい
仕様調整の往復が多く、工数が膨らみやすい
完成まで使えない
保守コストが継続的に発生しやすい
既製品への入れ替え
導入決定後、すぐに使い始められる
操作性(UI/UX)が整っている
AI-OCR機能を標準搭載している
顧客要望を踏まえた改善検討が行われる
「既製品ならクリアしているものが多く、導入が決まれば早く使える。コスト面と、ユーザーにとって分かりやすい操作性、使い勝手は有益だという話になりました」(山﨑さま)
こうして「既製品への入れ替え」という新たな選択肢を、検討することになりました。
PATPOSTだけを見ていたわけではありません。ワーキンググループは、複数の製品を比較検討しました。
「一番は格納のシンプルさです。ファイル名の付け替えが一番負担だったので」(山﨑さま)
この要件を満たす製品はいくつかあり、機能面で比較すると甲乙つけがたい状況でした。
「主要機能はどの製品も十分で、比較しても大きな差はありませんでした。ただ、細部では“こちらにあるが、あちらにはない”機能があり、判断に迷いました」(山﨑さま)
最終的に決め手となったのは、意外なポイントでした。
「要望を伝えたときに、PATPOSTは『いつ頃のアップデートでできるようになります』といった話や改善対応をしていただけたことが決め手になりました」(山﨑さま)
試用検証期間中、ワーキンググループは「こういう機能があったらもっと良い」という要望を、各ベンダーに伝えました。その際の対応が、ベンダーによって分かれたといいます。
PATPOSTの対応: 「○月のアップデートで実装予定です」 「ロードマップに組み込んで、具体的なスケジュールをお知らせします」
他社の対応: 「いつになるかは言えません」 「開発予定が決まっているので、対応は難しいです」 「確認して返答します」→ その後連絡待ちの状態
「オリックスが自身の課題を解決するために作ったシステムだと理解しました。現場の苦労を分かった上で作られているし、同じ気持ちを持つ営業の方がいる製品なので、どんどん使いやすくなっていくと思います」(山﨑さま)
「今、どんな機能があるか」ではなく、PATPOSTの「今後、どう成長していくか」に注目しました。製品選定では、従来と今回で評価軸そのものを見直しました。
従来の視点
現時点の機能が豊富
価格が安い
導入実績が多い
しかし、SaaS製品は導入時点で「完成」ではなく、継続的にアップデートされ、機能が追加され、使いやすくなっていく性質があります。
今回重視した視点
要望を聞く姿勢
改善スピード
ロードマップの透明性
一緒に育てるパートナーシップ
「完璧なシステムを求めるのではなく、一緒に育てていけるパートナーを選ぶ」この考え方が、ワーキンググループの結論でした。
しかし、社内には当然、慎重な声もありました。
数百万円を投じて導入したシステムを、わずか3年で、しかも減価償却が完了していない段階で入れ替えることは、社内の意思決定として高いハードルがあります。
「既存システムがある中で、別システムに乗り換えるべきか、というところの説明に時間をかけました」(福田さま)
では、ワーキンググループはどのように経営層を説得したのでしょうか。用意したのは、3つの説得材料でした。

最も説得力があったのは、作業時間の削減効果でした。
ワーキンググループは、PATPOSTを使った場合の作業時間を以下のように試算し、経営層に提示しました。
項目 | 旧システム | PATPOST | 改善 |
|---|---|---|---|
1ファイルあたり | 約4分 | 約1分 | 75%削減 |
月間作業時間(全社) | 約333時間 | 約83時間 | 250時間削減 |
年間作業時間(全社) | 約4,000時間 | 約1,000時間 | 3,000時間削減 |
年間人件費(全社) | 約1,000万円 | 約250万円 | 750万円削減 |
「PATPOSTにすると、作業時間が4分の1になる、という点を説明して、経営層に理解してもらえたと思います」(福田さま)
年間で見れば、3,000時間の削減。これは、約1.5人分の労働時間に相当します。
次に、投資回収の見通しを示しました。
投資額(初年度)
旧システム除却損:300万円
社内基幹システム改修:30万円
PATPOST年間費用:288万円
合計:618万円
効果(年間)
人件費削減:750万円
ROI
(定義)
累計回収率(n年目時点)=〔(人件費削減 − PATPOST年間費用)× n〕 ÷〔除却損+改修+(年間費用×3年)〕
(具体値)
1年目:462 / 1,194 = 38.7%
2年目: (462×2) / 1,194 = 77.4%
3年目: (462×3) / 1,194 = 116.1%
重要だったのは、初年度は削減効果750万円に対し、旧システム除却損・社内基幹システム改修・PATPOST年間費用を含む投資額618万円でも、差し引き132万円のプラスになる点です。
「これは『損切り』ではなく『投資』なんです」(福田さま)
最初の投資判断が間違っていたと捉えるのではなく、より良い選択肢が見つかったので、投資して改善する。ワーキンググループは、そう位置づけました。
数字だけではありません。ワーキンググループが重視したのは、現場の納得でした。
ヘビーユーザー50名を選び、PATPOSTの試用検証(PoC)を実施しました。ポイントは、この50名の中に、営業部門など、実際に日常的に帳票を扱う現場の担当者が含まれていたことです。
「ヘビーユーザー50名くらいに使ってもらって意見を集めました。今回は現場意見も聞いて、管理・現場両方に良い製品を検証できたので、導入後は楽になりました、という声もありました」(山﨑さま)
前回の課題は、管理側目線での導入だったことと考えて、今回は現場が実際に使って、「これなら使える」という確認を行いました。その結果、「また使われないシステムになる」リスクを最小限に抑えられる点について、経営層の理解と納得を得ることができました。
こうして2024年12月のPoCを経て、2025年1月に稟議が承認され、3月に運用開始が決まりました。検討開始から導入まで、約10カ月。ワーキンググループでの事前調整が功を奏し、スピーディーな意思決定が実現しました。

2025年3月中旬、利用者説明会を実施し、その日にPATPOSTの運用を開始しました。利用者から説明会後の質問は、ほとんどありませんでした。
「操作がシンプルでドラッグ&ドロップで入れられるので、特段『分からない』というのは多くなかったです。資料だけではイメージできなかった人も、実際やってみると簡単だと思ってもらえたのかなと思います」(山﨑さま)
運用開始から数カ月が経ち、現場からも具体的な声が上がってきました。
実務部門のトータルソリューション事業本部 TS事業統括部 TS計画部 計画課 主事 冨久田さまは次のように話します。
「手入力することがなくなりました。アップロードしたデータの画面からコピーすればいいだけなので、情報確認の間違いもなくなって良かったです」

以前は、PDFを開いて内容を確認し、ファイル名を手入力するという作業が必要でした。その過程で入力ミスのリスクもありました。今は、PATPOSTにアップロードすれば*入力は不要になり、ミスも減りました。
「自分の時間が短縮できたおかげで、忙しい人の作業を『手伝うよ』と言えるようになりました」(冨久田さま)
以前は、自分の作業で精一杯でしたが、今は、削減できた時間を他の業務に充てられています。チームメンバーのサポートもできています。時間的な余裕が生まれたことで、組織全体の柔軟性が高まりました。
そして、「Excelとマクロの達人」は、本来の業務に集中できるようになりました。専門スキルを持つ貴重な人材が、単純作業から解放されました。
*PATPOSTの電帳法対応要件は「PATPOSTの機能:https://patpost.jp/feature」をご参照くださいこうした成果により、同プロジェクトは社長賞を受賞しました。
評価されたのは、以下の点でした。
電帳法遵守体制の確立:PATPOST導入後2カ月で未処理帳票ゼロを実現
年間750万円の人件費削減:経営へのインパクト
部門横断での合意形成:ワーキンググループの成功
スピーディーな導入:10カ月での実現
「課題を発見し、より良い選択肢を見つけ、実行に移した」という、その姿勢そのものが評価されたといえます。

2022〜2023年に電帳法対応システムを導入した企業の多くが、次のような課題を抱えているのではないでしょうか。
ファイル名付け替えに時間がかかりすぎる
未処理帳票が溜まり続ける
現場負担が減らない
減価償却が残っていて、乗り換えに踏み切れない
同社の事例は、こうした状況に対し
「改善はできる」「減価償却途中でも“投資としての入れ替え”は成立する」
という実例となっています。
「電帳法対応がメインではありますが、副次的な機能も十分使えると思います。導入の際は、業務効率化の観点も含めて製品を選ぶのが良いと思います」(福田さま)
電帳法対応は法令遵守のために必要な投資です。ただ、それだけで終わらせず、業務効率化も視野に入れることで投資対効果をさらに高められる可能性があります。PATPOSTには、AI-OCRによる自動読み取り、検索機能の充実、データ抽出機能など、効率化につながる機能があります。
本事例から得られる示唆は、次の3点です。
投資回収の見通しが立てば、乗り換えは前向きな選択になる
除却損を含めても、ROI/費用対効果で判断する。
「損切り」ではなく「投資して改善」という発想。
部門横断での検討が、導入後の満足度を左右する
管理側だけでなく、現場の声も聞いて「使われないシステム化」を防ぐ。
ベンダーの「改善への姿勢」が、長期的な使いやすさにつながる
今の機能ではなく、“これからどう成長するか”を見る。
システムが現場の負担を減らしていない場合、
それは改善のチャンスです。
もしあなたの会社が同じ課題を抱えているなら、
“より良い未来への投資”として
新しい選択肢を検討する価値があります。
まずは、自社で同じ課題がどれくらい存在するか、作業時間と未処理帳票の件数を棚卸ししてみてはいかがでしょうか。
企業情報
会社名 | 協栄産業株式会社 |
業種 | 電子部品・半導体を中心としたエレクトロニクス関連卸売業 |
従業員数 | 787名(連結、2025年3月期) |
設立年 | 1947年 |
ご担当者 | •福田さま(コーポレート本部 総務部 総務課 専門課長) |
会社の特徴 | 「ICT技術で未来を創造する"System Technology Group"」を掲げ、ICT技術を軸に、製品提供からシステム・ソリューションまで幅広い分野で顧客の課題解決に貢献しています。 |
ホームページ | https://www.kyoei.co.jp/ |
※本記事は2026年2月時点の取材内容に基づいています。
※所属部署・役職、ならびにPATPOSTの契約条件(利用料金等)は取材当時のものです。

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