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作業時間50%削減、年間4,100時間の工数削減見込み ──...

株式会社大京アステージ

作業時間50%削減、年間4,100時間の工数削減見込み ── 活用率3割でも成果は本物。「完璧を待たない」組織が生んだ業務改革の実例 

規模

: 1000人以上

業界

: 不動産業

この記事でわかること

  • 活用率3割でも成果が出た“業務設計”の考え方

  • 約46,000件の転記を半減した現場ルーティン(3ケース)

  •  4,100時間削減試算の前提と、精度課題への対応方法

不動産管理業界では、修繕工事に関わる見積業務の負荷が年々増していると言われています。メーカーごとに異なるフォーマットや増え続けるPDF明細、慢性的な人員不足など、現場が直面する課題は多くの管理会社で指摘されています。入力作業の煩雑さやミスリスクは担当者の大きな負担となり、繁忙期には業務がひっ迫しやすい状況も見られます。

こうした業務構造の課題を背景に、AI-OCRや生成AIを活用した“現場主導のデジタル化”が注目されています。完璧なシステム連携を整えてから動くのではなく、日々の業務負荷を着実に減らしていく現実的なアプローチとして捉えられています。

株式会社大京アステージは、全国規模で分譲マンションを管理するオリックスグループの不動産管理会社です。同社でも、年間46,000件の修繕工事の見積もりを担当者が手入力で転記し続ける状況が続いていました。

「品番の入力が一番つらかった。数字の「3」「8」「0」が見間違えやすいし、長い羅列がずっと続くと集中力が切れる」

北関東支店の担当者はそう振り返ります。月間60件を3人で回し、見積もり作業だけで業務の5割超を占めるこの支店では、繁忙期になると業務がひっ迫し、対応しきれない案件が生じる状況が続いていました。

この状況を変えるために導入されたのが、2025年3月に運用を開始した高精度AI-OCR付き文書ストレージ「PATPOST」です。導入から半年の時点では、活用率は全社の約3割にとどまり、手入力やExcel経由の工程も残ったままでした。しかし、積極的な運用を行っている川崎支店は見積もり作成件数で全国1位を2カ月連続で達成する担当者が生まれ、東京第三支店では地域ブロック1位を獲得する担当者が登場するなど、部分的な活用でも明確な成果が生まれ始めていました。

では、なぜ“道半ば”の状態にもかかわらず、これほどの成果が生まれたのでしょうか。

現場が直面していた「転記の壁」──数字と声が示す業務の限界

大京アステージの見積書作成業務は、一見シンプルに見えて奥が深いものです。毎日協力会社からメールで届くPDFの協力会社見積もりは、会社ごとにフォーマットが異なります。これを担当者が目視で確認しながら、修繕工事見積もり計算用のExcelに手入力。そのExcelを工事管理システムに取り込むと見積書が自動生成され、利益計算・社内承認・管理組合への提示へと続きます。

問題は転記工程にあります。特に大型案件になると、台数500台・品目20〜30種類・複数メーカーが一枚の協力会社見積もりに混在します。品番の羅列を1文字ずつ目で追いながら入力する作業は、ベテラン社員でも集中力が途切れます。「数字の「3」「8」「0」を見間違える。数字の羅列が続くと、どこを見ているかわからなくなる」という声は、全国の支店で共通の悩みとなっていました。

導入前の業務課題

  • 年間約46,000件の見積もり転記が担当者の大きな負担に

  • 品番の羅列(3・8・0など)による入力ミスが頻発

  • 大型案件では1件あたり60分以上かかるケースも

  • 見積もり作業が業務の5割超を占め、繁忙期には業務がひっ迫し対応しきれない案件が発生

  • フォーマットが会社ごとに異なるため、統一した効率化が困難

AI-OCR導入の舞台裏──3社比較と「備考欄まで拾える」が決め手

事業企画部(企画)・技術管理部(技術部門の統括)・ICTS事業部(デジタルテクノロジー活用・推進)が合同で結成した「メンテナンス指摘業務の高度化・効率化WG(ワーキンググループ)」でAI-OCRの検討を始めたのは、現場からの切実な声がきっかけでした。年間約46,000件という膨大な見積もり転記業務に対し、「工事管理システムやExcelツールはすぐには変えられない。ならば、転記そのものを改善できないか」という発想が出発点となりました。

「aiocr」「見積もり」「excel出力」といったキーワードでインターネット検索し、5社程度のリモートミーティングを経て最終選考へ。選考に残った3社で試用・比較検討が行われました。

比較の評価軸

UI

読み取り精度

価格

備考欄の読み取り

A社

〇

〇

〇

△

B社

△

△

△

〇

PATPOST(採用)

〇

〇

〇

〇

決め手は、生成AI技術を活用した備考欄まで拾える精度と、価格・UI・読み取り精度のバランスでした。修繕工事の見積書には、金額・数量・品番だけでなく、施工条件や注意事項が備考欄に記載されることが多くあります。この情報を自動で読み取れるかどうかが、実務での使い勝手を大きく左右します。

活用率3割が成果をけん引──3つの現場ケース

2025年3月の導入後、主幹の技術管理部にて約10日間・全6回の説明会を開催し、約400名が参加。マニュアルも整備し、社内報を通じた事例共有も継続しました。それでも半年で定着したのは全社の約3割。残り7割はまだ「従来のやり方で問題ない」という状態が続きました。

しかし、この3割の中に、際立った成果を出した支店がありました。

※以下のケース①〜ケース③は仮名で紹介しています

ケース① 川崎支店──危機感から生まれた全国1位のルーティン

2025年10〜11月、川崎支店の田中さんが見積もり作成件数で全国1位を2カ月連続で達成しました。月間80件超という数字は、平均的な担当者の約2倍に相当します。

この成果の背景には、支店が抱えていた危機感がありました。新支店開業に伴う慌ただしさと人員不足で、見積もり作成件数が不足していました。山田課長は役割分担を柔軟に見直し、田中さんに担当外チームの見積もり作成も横断的に依頼することを決断しました。

「田中さんがPATPOSTを活用して効率化しなければ、この体制に変更することはできなかった。管理職会議でも支店の現状を共有し議論しました。田中さんが積極的に他課の案件も引き受けてくれたことで、状況改善とチーム全体のパフォーマンス向上につながりました。」(川崎支店 山田課長)

田中さんが確立したのは、シンプルかつ徹底したルーティンでした。

田中さんの「全国1位」ルーティン

  • 朝出社したら、まずPATPOSTを起動。届いた協力会社見積もりは片っ端から読み込む

  • キャビネット機能で「未作成」「作成済み」フォルダーを分けて進捗を一目管理

  • 見積もり作成の「コアタイム」を設け、その時間は作成作業だけに集中

  • 山田課長とのチェック分担を確立(田中さん:作成スピード重視、山田課長:精度確認)

  • 月間80件のうち約60件でPATPOSTを活用

「朝出社したら、まずPATPOSTを起動。届いた見積もりは、取りあえず片っ端から読み込みます。精度が高い読み取りとダウンロードのスピードが時短につながっています。フォルダー管理で進捗が一目でわかるので、作業が整理しやすいです。」(川崎支店 田中さん)

田中さんの取り組みはやがて支店の枠を越えて反響をよびました。支店内では、担当外チームからも「見積もり作成を任せたい」という依頼が集まり、一人の工夫が組織全体の業務設計を変えるきっかけになりました。

ケース② 東京第三支店──「分業設計」がもたらした地域ブロック1位

東京第三支店の成功は、ツールの導入だけでなく「誰が使うか」を再設計したことにあります。技術課長が、協力会社見積もりを入力用Excelに転記する作業を、工事事務の佐藤さんに集約する分業体制を構築。佐藤さんは業務を担い始めてすぐに「この作業、PATPOSTが合いそう」と感じ、自発的に導入を開始しました。

佐藤さんが特に効果を実感したのは2つのシーンでした。一つは、PDFがコピー不可のため手入力しか選択肢がなかった協力会社見積もり。もう一つは、LED工事の型番確認です。製品コードが英数字の長い羅列になることが多く、1文字のミスが誤発注に直結します。PATPOSTの項目読み取りは、こうした「間違えやすい場所」での入力負荷を大幅に軽減してくれます。

「以前は1時間以上かかっていた転記作業が、PATPOSTを使うと約半分の時間で完了できるようになりました。」(東京第三支店 佐藤さん)

この取り組みの成果として、東京第三支店の見積もり担当者は2026年3月期上半期の見積もり作成件数で第2ブロックで個人1位を獲得しました。「人にツールを合わせる」のではなく「業務の流れにツールをはめ込む」設計が、効率化を加速させました。

ケース③ 広島東営業部──推進者不在でも“自然に定着”した理由

広島東営業部 技術CS課には、専任のPATPOST推進担当者がいません。技術管理職会議での案内がきっかけとなり、共用部担当の木村さんと高橋さんが先行利用を始めました。導入マニュアルを参照しながら、自分たちで試行錯誤を繰り返す形で定着が進んでいます。

彼らが生み出したのは「使い分け」のルールです。明細が多い協力会社見積もり(LED化工事・受水槽修繕・EV部品交換など)はPATPOST。項目が少ないものは、手入力またはコピー&ペースト。この判断を現場の自己裁量に委ねたことで、無理のない定着が実現しました。

広島東営業部の「使い分け」基準

  • 明細20行以上の協力会社見積もり → PATPOST活用(作業時間:20分→10分)

  • 項目が少ない協力会社見積もり → 手入力またはコピー&ペーストで対応

  • 繁忙期に技術事務へ依頼していた簡単な見積もり作成 → PATPOST活用で自己完結に

「最初は新しいツールへの心理的ハードルがありましたが、実際に使ってみると、特にLED化工事のような明細が多い見積もりでは確実に時短効果が出ることが分かりました。OCRで自動変換されるので転記ミスがないし、パソコンが得意でない人でも使いやすいです。」(広島東営業部 木村さん)

3つのケースが示す共通点

川崎・東京・広島という異なる環境で生まれた成果には、共通の構造があります。

成功を生んだ3つの共通要因

  1. 「完璧」を待たず、使える場面から始めた
     ── 精度が100%でなくても、効果が出る業務を特定して先行活用

  2. ツールに業務を合わせるのではなく、業務にツールをはめ込んだ
     ── 誰が・何の作業に使うかを再設計

  3. 数字への危機感と、担当者の「やってみよう」という姿勢
     ── 推進者の有無より、現場の主体性が鍵

4,100時間のバリュー──数字が語るビジネスインパクト

1件あたりの作業時間は30分から15分へ、50%の削減。この数字だけでは実感しにくいかもしれません。しかし、スケールを変えて見ると意味が変わります。

年間4,100時間削減の試算根拠

  • 対象:高額帯工事(工事金額100万円超)16,400件

  • 削減時間:1件あたり15分(30分→15分)

  • 試算:16,400件 × 15分 ÷ 60 = 4,100時間

  • 換算:フルタイム社員約2名分の年間労働時間に相当

    ※全件数46,000件に適用した場合は最大6,830時間削減の試算も

なぜ「高額帯工事」に絞った試算なのか。それはリスク管理の観点からも合理的な判断です。金額が大きい案件ほど、転記ミスが発注トラブルや損失に直結しやすくなります。PATPOSTの読み取りは合計金額の精度が特に高く、「金額が正しければ大きなリスクは防げる」という運用設計が可能です。

また、北関東支店では別の変化も起きていました。月60件を3人で回し、見積もり転記が業務の5割超を占めていた現場では、PATPOSTの活用後も総業務時間は大きく変わっていません。しかし、後ろ倒しで滞留していた案件を期限内に処理できるようになり、チームの処理能力そのものが底上げされました。これは単純な「時間削減」ではなく「業務キャパシティーの拡張」として捉えるべき成果です。

AI活用の「不完全」と向き合う運用設計

導入から半年が経過した時点でも、課題は残っています。PATPOSTがすべての問題を解決したわけではありません。

現在残っている2つの課題

課題① 生成AIの抽出精度にばらつきがある
 ── 複数ページの備考欄では読み取りが難しいケースも
課題② Excel経由の工程が残る
 ── システム間の互換性により、PATPOST→CSV→入力用Excel→工事管理システムという流れが必要

同社が課題①に対してまず採った方針は、「精度の高いところから確認する」というシンプルな設計でした。合計金額は精度が高いため、その項目を重点確認。詳細の明細情報は、決裁申請時に協力会社見積もりを添付するタイミングで目視確認を行います。「情報の重要度に応じて確認タイミングを変える」という発想が、AIツールを実務に定着させるための現実的な知恵です。

そのうえで、2つの課題の根本解決に向けたロードマップを策定しました。

課題①の抽出精度については、抽出条件設定の見直しと協力会社との項目定義のすり合わせを短期施策として進めています。各社の備考・規格・形状の記載方法を統一することで、複数社の見積もりを同じ抽出条件で一括処理できる状態を目指します。

課題②のExcel経由の工程については、PDF受領からPATPOSTでの自動抽出、工事管理システムへの自動反映までをAPI連携でつなぐPoCを中期目標として設定。手動を挟む現在の流れを、将来的にはシームレスなデータ連携へと置き換える構想です。

活用領域の拡張も並行して進んでいます。技術部門にとどまらず、保険部でも損害保険見積書・申込書・契約書への適用がすでに始まっており、PATPOSTが扱えるドキュメントの幅は着実に広がっています。

残り7割へどう広げるか──強制しない浸透戦略

全社で3割が使いこなしているという現状を、管轄する技術管理部の石川さんはどう評価しているのでしょうか。「活用が進んでいる支店かどうかは、書類の量とは関係ない。担当者の属人的な部分が大きい」というのが率直な見立てです。

だからこそ、展開方針も「強制」ではなく「選択肢の提示」を選びました。

浸透のための3ステップ

ステップ① 説明会6回・約400名参加
 ── 基本操作と活用イメージを全社に共有
ステップ② 社内報で事例を継続発信
 ── 田中さんのフォルダー術、佐藤さんの分業設計を「こんな使い方もある」として紹介
ステップ③ 現場主導の改善サイクル
 ── 技術管理部が細かく指示するのではなく、担当者が自ら工夫する余地を残す

「一つの正解」を押しつけるのではなく、複数の選択肢を示す。この姿勢が、各現場での自発的な工夫を促しています。川崎支店のフォルダー管理術も、東京第三支店の分業設計も、広島の「使い分け」ルールも、すべてが現場から生まれたアイデアです。

「PATPOSTは最初「文書ストレージ」という認識でしたが、読み取り精度や並び替えのアレンジができるなど、懐の深いサービスです。各社に合った使い方で一度試してみると良いと思います。」(技術管理部 石川さん)

「使いやすいツールやアプリを活用して効率化するのは良いことです。ちゅうちょせず試してみることをおすすめします。」(事業企画部 浜田さん)

まとめ──生成AI時代のDX推進が直面する3つの壁

大京アステージの事例は、生成AI導入を検討する企業の「リアルな壁」への答えを示しています。

壁① 「完璧な環境が整ってから」という罠

「全員が使えるようになってから」「システム連携が完璧になってから」「100%の精度が出てから」──こうした思考が、DXを止める最大の要因です。大京アステージは活用率3割・手入力あり・Excel経由という「段階的な状態」のまま取り組みを続け、全国1位・地域1位という成果を出しました。PATPOSTの高精度AI-OCRと生成AI機能が、できるところから始める運用でも成果を生む基盤となっています。

壁② 「全員を巻き込まなければ」という思い込み

全員の合意・全部門一斉・統一ルール先行──こうしたアプローチは時に機能しますが、生成AIツールの導入では逆効果になることも少なくありません。大京アステージでは、3割の先行活用者が成果を出し、その事例を社内報で可視化することで、残り7割への有機的な広がりを生み出しつつあります。

壁③ 「時間が減った」だけがDXの成果ではない

業務時間が減らなければ失敗、という単純な評価軸は実態を見誤ります。北関東支店では総業務時間は大きく変わりませんでしたが、後ろ倒しで滞留していた案件を期限内に処理できるようになりました。川崎支店では月60件から80件超へ処理件数が拡大しています。「同じ時間で、より多くの価値を生む」という視点こそ、DXの正当な評価軸です。

生成AIが進化し続ける今、DX推進のアプローチも変わりつつあります。一見「道半ば」に見える3割の活用が、全社の業務を確実に動かし始めています。大京アステージの事例は、完璧を待たずに動き始めることが、この時代のDXにおいてひとつの有力な選択肢であることを示しています。

企業情報

会社名

株式会社大京アステージ

業種

マンション管理業

従業員数

合計1,827名(2025年3月31日現在)※ほか、管理員など5,638名

設立年

1969年

会社の特徴

全国規模で分譲マンションを管理するオリックスグループの不動産管理会社。全国の総合管理受託戸数グループ別ランキングで第1位(マンション管理会社㈱大京アステージ、㈱穴吹コミュニティの管理実績累計)/マンション管理新聞(2025年5月25日発行)調べ(2025年3月末現在)

ホームページ

https://www.daikyo-astage.co.jp/

※本記事は2026年3月時点の取材内容に基づいています。
※所属部署・役職、ならびにPATPOSTの契約条件(利用料金等)は取材当時のものです。

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