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人手不足や残業時間の上限規制が進むなか、AIで業務を改善したいと考える企業は増えています。しかし「何から始めればいいのか分からない」「AIを業務にうまく組み込めない」という声も少なくありません。
そこで本記事では、AIで業務改善を実現するための進め方、具体的な活用事例、製品選定のポイントを解説します。
「AIによる業務改善」は、明確な定義が存在しないまま使われることが多い言葉です。そこで本記事では、AIによる業務改善を以下のように定義します。
AIによる業務改善とは、人間が担っている認知・判断・生成の一部をAIに支援・代替させ、業務の量・質・構造のいずれかを意図的に改善する取り組み
人の作業をAIが支援・代替することでポジティブな変化を起こすのがAIによる業務改善です。また「変化」には、大きく以下の3つがあります。
量の変化:単位時間あたりの処理量が増える
質の変化:アウトプットの精度・一貫性・網羅性が上がる
構造の変化:そもそも必要だった工程がなくなる/別の工程に置き換わる
このような変化を通じて「コストの削減・属人化の解消・業務負担の軽減」といったメリットを享受できます。

業務改善にAIを取り入れても「思ったように効率が上がらない」「従業員間のスキル差により運用が進まず定着しない」などの理由で、うまく活用できないケースは少なくありません。AI活用がうまくいかないケースには、大きく2つのパターンがあります。
ひとつは、導入そのものが目的になってしまうケースです。経営層の指示、競合の動向、補助金の獲得機会といった外発的な理由から導入が先に決まると、AIが苦手とする業務にまで無理に適用してしまうことがあります。
もうひとつは、AIの出力の検証が足りていないケースです。例えば資料作成にAIを使った結果、体裁は整っているが中身の薄い成果物ができあがり、レビューや修正の負担がかえって増加してしまうことがあります。このように「一見もっともらしいが、実質的な価値の乏しいAIアウトプットにより検証コストを生み出す状態」は、近年「ワークスロップ(workslop)」と呼ばれることもあります。
いずれの失敗も、業務の特性とAIの特性がうまく噛み合っていないことが要因です。したがって、業務改善のためには「AIの特性に適した業務を見極めること」が大切となります。
次項からは、AIによる業務改善の効果が出やすい業務の特徴を紹介します。

AIを導入しやすい業務とは、どのようなものでしょうか。特徴として、次の3つが挙げられます。
必要な情報をAIに渡せる
出力の正誤を人間が低い負担で検証できる
同じパターンが繰り返される
詳しく見ていきましょう。
AIは渡された情報の範囲内で推論し、出力をします。そのため「すでにマニュアル化されている」「過去のナレッジが集積されている」など、あらゆるデータがAIに渡せる状態になっている業務は、改善効果が出やすい傾向にあります。
一方で「過去の経験や経緯に依存している」「個人の暗黙知になっている」など、AIに情報を渡しにくい業務は適切なアウトプットが出しにくいため、適用が難しいことがあります。
<h3>3-2. 特徴2:出力の正誤を人間が低い負担で検証できる
AIによる効果が現れるのは「検証にかかるコストが、自ら作業するコストを下回る場合」です。そのため、計算結果の確認や内容の突き合わせなど、人間によるチェックが短時間で済む業務は改善効果が出やすい傾向にあります。
また「誤りが後工程に流れても損失が大きくない」業務、あるいは「誤りを確実に止める工程や仕組みがある」業務であれば、安心してAIに任せやすくなります。
一方、専門性が高く、もっともらしい誤りを見抜くのに事実確認を要する業務や、契約条文・対外公開の数値など誤りによる損失が大きい業務では、検証・管理のコストがかさみ、AIに任せる利点が失われることもあります。
AIは過去の類似事例から確率的に出力・生成をするため「同じパターンが繰り返される」業務と相性が良いといえます。例えば定型的な問い合わせ対応や、議事録作成などが好例です。一方で、一回限りの新規業務には適用しにくい性質があります。
このような「3つの特徴が揃った業務」にAIを導入すると、効果を得やすくなります。
次項からは実際の活用シーンを見ていきましょう。

本項では、実際に成果を出している企業の事例を交えながら、具体的な活用シーンをご紹介します。
AI-OCRによるデータ化は、多くのバックオフィスで広がりつつあります。AI-OCRとは、従来のOCRにAI技術を組み合わせたもので、さまざまなレイアウトの書類から高い精度で文字を読み取れる技術です。紙やPDFで届く請求書や契約書をAI-OCRが読み取って入力することで、人間は確認・修正に注力できるようになり、手入力や書類検索などの負担を減らしやすくなります。
例えばAI-OCR搭載の文書管理サービス「PATPOST」は、アップロードした書類から、ユーザーが自然言語で指示した処理設定に基づきAIが必要項目を判別・整形して抽出。原本と抽出情報をひもづけて保管できます。また全文検索やメタデータ検索、CSVファイル出力やAPI連携にも対応しているため、後続業務で扱えるデータに整えやすいのも特長です。
対話型AIの進化により、文脈をふまえた問い合わせ対応が可能になりつつあります。過去のFAQや製品マニュアルを学習させることで、担当者による回答のばらつきを抑えながら、対応スピードを上げることも可能です。
例えばKDDI株式会社では、問い合わせを気軽に行える「auサポート AIアドバイザー」が始動しており、テキストや発話でサービスの相談をすることができます。また、積水ハウス株式会社では、実際に積水ハウスで住宅を建てた顧客のSNS投稿の情報をもとにしたリアルな話を聞ける「SUMAI style chat」が運用されており、住宅検討層が24時間相談できる環境を提供しています。
参照:auサポート AIアドバイザー(KDDI株式会社)
https://cs4.kddi.com/z/ausupport_aiadvisor/index.html
SUMAI style chat
https://www.sekisuihouse.co.jp/kodate/aichat/
営業・マーケティングでは、顧客ごとに適切な提案を行うことが成果につながります。AIで顧客データを分析することで、これまで担当者の経験や勘に依存していた提案を、データにもとづいて行えるようになりました。
明治安田生命保険相互会社は、生成AIを活用した「デジタル秘書」を全従業員へ段階的に展開しています。まず2024年10月から、約3万6000人の営業職員を対象に「デジタル秘書 MYパレット」を導入。顧客のニーズや面談で得た情報を簡単に入力・参照でき、AIがそのデータを分析して一人ひとりに適した提案につなげる仕組みです。
さらに2025年8月からは、役職員向けにも、組織や職務ごとの業務の流れ・タスク内容に対応するメニューを備えた「デジタル秘書」を展開。営業現場から本社業務まで、全従業員の効率化・高度化を支える基盤へと活用範囲を広げています。
こうした提案の高度化を支えるソリューションも広がっています。日本電気株式会社(NEC)は2025年6月、生成AIと消費者購買データを組み合わせたマーケティング施策立案ソリューション「BestMove」の提供を開始しました。顧客分析から施策立案、効果予測までを支援し、従来は経験と勘に頼りがちだった施策決定を、データにもとづく意思決定へと変えることを狙いとしています。
参照:アクセンチュア社との包括的パートナーシップ契約の締結について(明治安田生命保険相互会社)
https://www.meijiyasuda.co.jp/profile/news/release/2024/pdf/20250116_01.pdf
DX戦略の推進(明治安田)
https://www.meijiyasuda-saiyo.com/about/torikumi/dx.html
BestMove(日本電気株式会社)
https://jpn.nec.com/bestmove/
AIはバックオフィス業務だけでなく、現場業務でも活用が進んでいます。
GMOインターネットグループ株式会社は、グループ全体で生成AIの業務活用を推進しています。2026年4月の発表によると、国内グループ従業員の生成AI業務活用率は97.8%に達し、ひと月あたり約35.2万時間の業務時間削減を実現しています。さらにAIエージェントの業務活用率も7割を超えており、日常業務の効率化からより高度な自動化へと活用の幅が広がっています。
また製造・建設の現場では、カメラ画像やセンサーデータをAIで解析することで、人の目では気づきにくい危険の察知や、熟練者の判断を要する工程の最適化が可能になり始めています。横河電機とENEOSマテリアルでは、化学プラントの操業に自律制御AI「FKDPP」を導入しました。従来は熟練の運転員が手動で操作するしかなかった蒸留塔の複雑な制御をAIが担う仕組みで、2022年には35日間の連続自律運転に成功しています。約1年間の運用を通じて、蒸気使用量とCO2排出量を手動制御時と比べて約40%削減しました。
参照:AIエージェント業務活用率が約7割に急伸、月間35.2万時間の業務削減を実現(GMOインターネットグループ株式会社)
https://group.gmo/news/article/9982/
世界初 強化学習AIが化学プラントに正式採用(ENEOSマテリアル/横河電機)
https://www.yokogawa.co.jp/news/press-releases/2023/2023-03-30-ja/

AIによる業務改善は、何から始めると効果的なのでしょうか。
McKinsey & Companyは2025年に「生成AIの導入によって成果(税引前利益)が出ている組織の共通要因は何か」についての調査結果を公表しています(調査実施は2024年)。結果、調査した25項目のうち、最も成果と相関していたのは「ワークフローの再設計」でした。しかし「生成AIを活用している」と回答した組織のうち、ワークフローを「根本的に再設計した」と答えたのはわずか21%にとどまっています。
背景にあるのは、再設計そのものの難しさです。AI活用において、手始めに汎用AI(ChatGPTやClaudeなど)を取り入れる企業は少なくありませんが、汎用AIを中心にしてワークフローを設計するには、設計や手順の整備、作った仕組み自体の維持・改修までを自力で担う必要があり、相応の労力がかかります。するとAI活用が個人単位にとどまってしまうため、組織全体の改善までは届きにくい傾向にあります。
そこで有効な選択肢となるのが、AIを活用したSaaSの導入です。SaaSは入力・処理・出力という業務フローの骨格を製品側で設計しているため、再設計の大部分を製品に委ねられ、導入の負担を抑えられます。
そこで本項では、SaaS導入に必要な設計から運用までの流れを、次の5つのステップで解説します。
AIに向く業務の候補を挙げる
候補業務の現状を棚卸しする
製品を選び、導入後のフロー案を描く
検証し、効果を測る
導入を決定し、本格展開する
最初に、AIに任せる業務の候補出しを行いましょう。「月末に残業が集中している」「転記ミスが減らない」など、現場が課題を感じている業務を起点に絞り込みます。
また前述した「AIを取り入れやすい業務の特徴3つ(必要な情報をAIに渡せる/出力の正誤を人間が低い負担で検証できる/同じパターンが繰り返される)」と照らし合わせるのもおすすめです。
今回は「AIを取り入れやすい業務の特徴3つ」に当てはまり、かつフローとして組み込みやすい業務と製品の例を、以下にて一部紹介します。
業務カテゴリ | 製品種別 | サービス例 |
|---|---|---|
書類(請求書など)のデータ化 | AI-OCR系 | PATPOST、DX Suite |
社内問い合わせ対応 | チャットボット系 | ChatPlus、Helpfeel |
採用書類の一次仕分け | 採用管理AI系 | PERSONA、sonar ATS、Talent Palette |
経費精算・仕訳前処理 | 経費精算AI系 | 楽楽精算、マネーフォワード クラウド経費 |
なお、文書管理とAI-OCRを組み合わせた導入イメージは、PATPOSTのサービス資料でもご確認いただけます。
PATPOST サービス資料はこちら
対象業務の候補が挙がったら、業務の現状を棚卸ししましょう。
棚卸しには、以下3つの役割があります。
製品選定の前提情報になる
効果測定の基準値(導入前の数字)になる
社内に説明する際の材料になる
細かい調査は必要ありませんが「誰が・どのような手順で・月に何件・どのくらいの時間をかけて処理しているか」を把握しておくことで、その情報を後の工程に役立てることができます。
次に、候補業務に対応する製品を選定します。業務の課題に対応する製品を、候補として複数挙げ、比較しましょう。
比較の観点には、次のようなものがあります。
対象業務の形式に適合するか(扱える書式やデータ形式など)
既存システムとデータ連携する手段があるか(CSV出力、API連携など)
セキュリティ要件を満たしているか
料金やその体系が許容範囲内か
サポートが充実しているか
製品の候補が絞り込めたら、機能と自社の既存フローを突き合わせ「どの工程が製品に置き換わり、人による確認はどこに残るか」という導入後のフロー案を描きます。フロー案を先に描いておくことで、次の検証で「何を確かめるべきか」が明確になります。
フロー案ができたら、1業務・限られた件数で小さく運用してみましょう。導入効果は、ステップ2で押さえた基準値(1処理あたりの時間など)と突き合わせて比較することで導き出せます。このとき「人による確認・修正にかかった時間」まで含めて測るのがポイントです。
また定量的な指標だけでなく、担当者の負担感の有無や使いやすさなど、定性的な側面もヒアリングしておくと良いでしょう。
揃ったトライアルの結果をもとに導入の意思決定をしたのち、本格運用を開始しましょう。
ただし導入後だから安心とはいかず、試用段階では見えなかった課題が出てくることもあります。例えば以下のような課題です。
新たな例外が出てくる
製品利用につまずく担当者が出てくる
1つめは、新たな例外に直面することです。処理件数や種類が増えると、読み取りにくい書類や、答えにくい問い合わせなど、経験にない対応を迫られることがあります。そのため、例外が出ることは前提に置き、事前に「誰がどの手順で対応するか」という経路を決めておきましょう。同じ例外を繰り返す場合は、ルールの更新が必要になることもあります。
2つめは、製品が定着しないことです。製品の展開に伴い利用者数が増加すると、旧来の作業方法を「念のため」と言って並走させる人や、製品仕様に慣れず作業が一時的に遅延してしまう人などが出現する可能性があります。事前に「簡単なマニュアルを整備して周知する」「問い合わせ先を明確にして示しておく」など、使い始める人を支える手段を用意しましょう。
このように、SaaSにあわせた「ワークフローの再設計」はいずれも現場主導で取り組みやすい傾向にあるため、ぜひ一度検討してみてください。
参照:McKinsey & Company "The state of AI: How organizations are rewiring to capture value" (March 2025)
https://www.mckinsey.com/capabilities/quantumblack/our-insights/the-state-of-ai-how-organizations-are-rewiring-to-capture-value#/
AIによる業務改善に関してよくある質問にお答えします。
A:いいえ、現在はSaaS型の製品が主流で、月額数千円〜数万円でのスモールスタートが可能なものも多くあります。大規模なシステム開発よりも、既存製品を組み合わせて業務フローを変える方が、投資対効果は高くなる傾向があります。
A:日常的にPC業務を行い、Webサービスの利用やExcelなどのオフィスソフトの基本操作に慣れている方であれば、比較的活用しやすいと言えます。最近のAIは、ノーコード(プログラミング不要)で直感的に使えるものが増えています。ただし「どの業務をAIに任せるか」を決める業務整理は必要ですので、ITスキルよりも、自社の業務フローを把握している現場リーダーの協力が不可欠です。
A:はい、活用可能です。ただし「AIの出力は100%ではない」という前提で、人間が最終確認を行うプロセス(Human-in-the-Loop)を組み込むことが重要です。すべてを自動化しようとせず、「AIに下書きや一次分析を任せ、人間が仕上げを行う」という役割分担にすることで、ゼロから手作業で行うよりも時間を短縮できる傾向にあります。
A:請求書処理や経費精算など、入力内容の照合や確認が比較的行いやすい定型業務から始めるのがおすすめです。こういった業務であれば、成果が見えやすく、現場の負担軽減を実感しやすいため、その後のスケールアップもスムーズに進めることができます。
AIを適切に導入できれば、業務量の削減や質の向上が期待できます。ただし、業務とAIの特性が合致しない場合は、現場に混乱をきたすこともあります。効果を得るには、両者の特性を見極め、業務フローを組み替えながら導入を進めることが前提です。
業務フローの組み替えの労力が気になる場合は、SaaSなどシステムの導入も検討してください。
AI-OCR搭載の文書管理サービス「PATPOST」なら、アップロードした書類から、データ抽出・分類・全文検索が行えます。書類の内容から生成AIが必要な項目を抽出するため、これまで人力に頼っていたデータ転記の負担削減が期待できます。さらに、CSV出力やAPI連携1による他システムとのデータ連携もスムーズ。電子帳簿保存法2やインボイス制度にも対応しており、既存の書類受け取りフローに重ねる形で導入できます。
まずは定型業務やバックオフィスなど、自社の中で最も繰り返しが多い業務から検討してみてはいかがでしょうか。
*1 100ID以上のご契約の場合は無償でご利用いただけます。100ID未満のご契約の場合は有償となります
*2 電子取引データ保存の場合、訂正・削除防止に関する事務処理規程の制定・遵守が別途必要ですプロフィール

データサイエンティスト
武藤 祐典(むとう ゆうすけ)
銀行における営業を経てIT業界へ転身。大手通信事業者でのデータサイエンティスト経験を経て独立。主に、テレビ局におけるデータ分析・AI活用支援、AI専門メディアにおけるテクニカルライティング、AI人材育成会社における研修講師登壇に従事している。
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