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人手不足や業務の複雑化に悩む企業が増えるなか、解決の手段として注目されているのが「AIによる業務効率化」です。
しかしいざ導入を検討するとなると、「どの業務に使えるのか」「本当に効果が出るのか」「導入が難しそう」と、不安を感じる担当者も多いのではないでしょうか。
この記事では、AIを活用した業務効率化の基本的な考え方から、具体的な活用事例、導入を成功させるためのポイントを解説します。

AIによる業務効率化は、2つの段階で考えるとわかりやすくなります。
1段階目は、単純作業や定型業務をAIに代替・補助させる段階。
2段階目は、そこで浮いた時間や人手を、高度な判断や創造性が求められる仕事に振り向ける段階です。
単に「楽をする」ことが目的ではなく「人がより価値の高い仕事に集中できる環境をつくる」「組織全体の生産性を高める」ことが、AI活用の本来の目的と言えるでしょう。
AIが業務効率化で担う役割は、大きく2つに整理できます。
定型的なデータ処理やパターン認識
判断や創造性を伴う業務の補助
例えば請求書の自動仕分け、異常値の検知、書類のデータ化など、ルールやパターンで処理できる業務はAIの得意分野で、活用しやすい業務と言えます。さらに近年は判断が可能な生成AIの登場によって、文書作成やデータ分析など、これまで「人にしかできない」とされてきた業務も一部代替できるようになりました。
結果として、AIは業務スピードを上げるだけでなく、意思決定の質そのものを支える存在になりつつあります。
AI活用への注目が加速している背景には、性質の異なる3つの圧力があります。
一つ目は、労働力不足です。
日本の生産年齢人口は1995年をピークに減り続けており「限られた人員で成果を出すための仕組みづくり」が業種を問わず急務になっています。とくに物流・建設などで残業規制が強化された2024年以降、業務全体の見直しを迫られる企業が増えました。
二つ目は、国際的な競争力への危機感です。
PwC「2025 Global AI Jobs Barometer」では、AI活用が進む産業ほど従業員あたり売上の成長率が高い傾向が示されており、世界経済フォーラム(WEF)「Future of Jobs Report 2025」でも、AIやデータ活用スキルの重要性が急速に高まると指摘されています。こうした背景から「AI活用の遅れが中長期的な競争力格差につながるのではないか」という認識が広がりました。
三つ目は、生成AIの登場による「利用ハードルの劇的な低下」です。
AIはこれまで、専門人材やシステム投資が前提でした。しかし日常の言葉で扱える生成AIが普及したことで、個人や現場レベルでも試せるようになりました。生成AIを機能として組み込んだSaaSも増え、初期投資を抑えてスモールスタートできる環境が整ってきています。
参照:
PwC「The Fearless Future: 2025 Global AI Jobs Barometer」
https://www.pwc.com/gx/en/services/ai/ai-jobs-barometer.html
世界経済フォーラム(WEF)「The Future of Jobs Report 2025」
https://www.weforum.org/publications/the-future-of-jobs-report-2025/
では、AIでどのような業務が効率化できるのでしょうか。
ここでは、以下3つの部門で発生しやすい課題と、AI活用の切り口となる例を紹介します。
事務・バックオフィス部門
営業・マーケティング部門
企画・開発部門
バックオフィス業務(経理・人事・法務・総務)は「正確さが求められる定型作業」が多く、テキスト・数値データを処理できるAIとの親和性が高い傾向にあります。
以下に各部門が抱えやすい課題と、AIによる効率化の方向性をまとめました。
部門 | 業務 | よくある課題/AIの活用イメージ |
|---|---|---|
人事 | 採用 | 書類選考のスクリーニングに大量の工数がかかる |
人材配置・評価 | 評価データが属人的で一貫性がない | |
研修・教育 | 社員ごとに必要なスキルが異なるのに一律研修になりがち | |
労務 | 勤怠管理 | 打刻漏れや残業時間の集計・チェックに手作業が多い |
給与計算 | 法改正や個別条件(手当・控除)の反映ミスが起きやすい | |
社会保険・手続き | 入退社のたびに届出書類の作成・提出が発生 | |
総務 | 問い合わせ対応 | 社内規程・福利厚生・備品などの問い合わせが総務に集中する |
文書管理 | 規程・契約書・議事録などが散在して探しにくい | |
経理 | 仕訳・記帳 | 人的ミス、仕訳の判断に時間がかかる |
経費精算 | 申請内容のチェック(規程違反、重複申請)が手作業 | |
月次・年次決算 | データの集計・突合に大量の時間がかかる | |
請求・入金管理 | 大量の入金消込における、照合作業の高負荷化 |
例えば紙の書類はAI-OCRで読み取ることでデータ化できます。書類の一元管理ができるようになるだけでなく、検索性の向上やデータ集計の効率化も可能です。
営業活動において、商談以外の付随業務が時間の多くを占めているケースは少なくありません。これらの事務作業にかかる時間をAIにより短縮することで、分析・判断・施策の立案、顧客とのコミュニケーションなど、人間が注力すべき業務にリソースを割きやすくなります。
部門 | 業務 | よくある課題/AIの活用イメージ |
|---|---|---|
営業 | リード管理 | 見込み顧客の優先順位づけが営業担当者の経験や勘に依存している |
商談・提案 | 提案資料の作成に時間がかかり、顧客ごとのカスタマイズが属人的 | |
売上予測・報告 | 売上見込みが担当者の感覚ベースで、予測精度にばらつきがある | |
顧客対応・フォロー | 対応履歴が散在し、フォロー漏れや対応の重複が発生する | |
日報・議事録作成 | 商談後の記録作成に時間を取られ、営業活動の時間が圧迫される | |
マーケティング | コンテンツ制作 | 記事・SNS投稿・メルマガなどの作成に工数がかかる |
広告運用 | 入札調整やターゲティングの最適化に手間と専門知識が必要 | |
市場調査・競合分析 | 情報収集と整理に大量の時間がかかり、更新頻度が低くなりがち | |
顧客分析・セグメンテーション | 顧客データを保有しているが、分析・活用しきれていない | |
メール配信・MA運用 | 配信タイミングや件名の最適化が経験頼みで効果が安定しない |
資料作成など、AIでPC業務を効率化することで、人間がより強みを発揮しやすい「対面でのフォロー」「提案内容の立案」などの業務に時間を充てることができます。また、マーケティングでは顧客データなどの情報資産の分析や、リサーチの効率化を目的としてAIが使われるケースがあります。
企画や開発など、アイデアの創出や膨大な情報の整理が必要な部門において、AIは情報集約や要約を行う「リサーチアシスタント」として機能する可能性があります。
部門 | 業務 | よくある課題/AI活用のイメージ |
|---|---|---|
企画 | 市場リサーチ・情報収集 | 業界動向や競合情報の収集・整理に大量の時間がかかる |
企画立案・アイデア出し | アイデアが担当者の経験に偏り、視点の幅が限られる | |
事業計画・収支シミュレーション | 前提条件を変えたシミュレーションを手作業で何パターンも作る必要がある | |
プレゼン資料作成 | 構成や文言の検討に時間がかかり、デザイン調整も手間 | |
開発 | 要件定義・設計 | 要件のヒアリング内容の整理や仕様書への落とし込みが属人的 |
コーディング・実装 | 定型的なコードの記述やボイラープレートの作成に時間を取られる | |
テスト・品質管理 | テストケースの作成やバグ原因の特定に工数がかかる | |
技術ドキュメント作成 | コードの更新に対してドキュメントの更新が追いつかない |
このように、かつて人間が行ってきた「情報を探す・分析する・予測する」プロセスの一部を、AIによって支援・補助することが可能です。属人化しがちなナレッジの共有も促進でき、イノベーションを加速させる効果も期待できるでしょう。
ただし、AIは時として事実と異なる情報を生成する場合(ハルシネーション)があるため、重要な情報については一次ソースを確認することが大切です。

ここでは、特に効果が顕著なバックオフィス業務において、AIを活用して課題を解決した具体的な事例を紹介します。AIと人間の「得意分野」を組み合わせることで、どのように業務が変わったかを見ていきましょう。
以下は、「AIによる一次処理と人間による最終確認」というフローを導入し、業務の標準化と属人化の解消を実現したオリックス株式会社の事例です。
<導入前の課題>
同社では、不動産仲介業務における物件概要書の作成を行っています。入力が必要な項目は物件所在地、面積、権利関係、取引条件、備考など30項目。また項目数の多さだけでなく、以下のような課題も抱えていました。
営業担当者が個別に作成していたため、記載内容の粒度や精度にバラつきが生じていた
確認基準が人によって異なり、人員の入れ替えなどで品質を維持できない可能性があった
人的ミスを防ぐための二重・三重のチェックが必要だった
1件30分もかかる入力作業が年間約1,750件、さらにチェック体制も未整備かつ、属人化している状況でした。スピードと精度を安定して維持できる体制を整えるべく、システムの導入を決定しました。
<施策>
AI-OCR搭載の文書管理サービス「PATPOST」を導入しました。理由は以下のとおりです。
PDFから抽出したデータをCSV形式で出力する機能があった
物件概要書出力システムがCSVインポートに対応しており、追加の大きな投資もシステム改修が不要だった
ただし一部読み取りが難しい箇所があったため(2025年8月時点)、最終的な運用では、物件情報のみをPATPOSTにアップロードし、不動産登記簿謄本は手入力とする方針を採用しました。
<PATPOST導入後の成果>
システムが結果をチェックする体制に移行したことで、個人の経験則やスキル差に頼らない「品質の均質化」が進みました。
1件あたりの入力時間:30→15分(約50%)
年間約437.5時間の削減見込み
システムによる入力と人によるチェックの役割分担により、客観的なチェック体制を確立
品質の一定化により属人化を解消し、人の入れ替えに強い体制を構築
見落としやすい小さな文字も抽出しやすくなることで、記入漏れの防止にも繋がっています。
【関連記事】
転記時間50%削減、品質管理も強化。オリックスが物件概要書作成で目指す業務改善の本質
以下はAI-OCR搭載の文書管理サービスの導入により「心理的な負担」「時間の圧迫」という2つの課題を解決した、Daigasガスアンドパワーソリューション株式会社の事例です。
<導入前の課題>
購買・調達チームでは、エネルギー供給設備や発電プラントなどの調達業務を担当しています。担当者は営業から契約締結まで一貫して行っていましたが、見積書の内容を査定書(Excel)に入力する作業に負担を感じていました。
具体的には、以下のような課題がありました。
取り扱う見積書が多様(数億規模の大型案件では数十ページ以上に及ぶケースも)
処理件数は40〜50件/月、1回あたり1〜2時間かかる
購買戦略や価格交渉など、本来の業務に時間を割けず、担当者の心理的負担が増加
人的ミスがたびたび発生するため、不安が常につきまとう
案件によっては入力作業に数時間~数日間かかるケースもあり、幅広く業務を行っている担当者にとって、このような「時間のかかる単純作業」は大きな負担でした。
<施策>
AI-OCRの導入を検討していた同社は、4社のAI-OCR製品をリストアップ。すべての製品について実務に沿った1カ月の試用を実施し、選ばれたのがPATPOSTでした。
理由は以下のとおりです。
従業員の心理的負担の軽減に直結する「読み取り精度」が高かった
生成AIが搭載されており、製品コードや金額といった項目の意味を理解したうえでデータを抽出できた
抽出条件のカスタマイズも可能だった
予算の範囲内だった
UIがまとまっていてきれいで、機能もシンプルだった
<PATPOST導入後の成果>
PATPOSTに見積書をアップロードすると、項目を自動で抽出しExcelに一括入力することが可能です。導入後の成果は以下のとおりです。
1件あたりの作業時間:1〜2時間→数十分に短縮
人的ミスへの不安が解消され、担当者の心理的負担が軽減
大型案件受注時のプレッシャーが緩和
市場分析・戦略的思考・交渉力といった「注力すべき業務」の時間確保が可能に
AI-OCRによる一次処理を取り入れたことで、本来注力すべき購買戦略業務に時間を充てられる体制が整いました。
【関連記事】
購買戦略に集中するための選択──転記作業の心理的負担を削減したPATPOST導入
PATPOSTの機能についてはこちら

業務効率化のためにシステムを導入したものの、思った通りの成果が得られなかったり、運用に乗らなかったりするケースがあります。
本項では「よくある課題」と、その対策を紹介します。
システム導入でよくある課題に「システムが定着しない」「業務要件とシステムが合わない」「データ活用がうまくいかない」などがあります。
以下に整理しました。
課題 | 詳細 |
|---|---|
システムが定着せず運用に乗らない | ● システムが複雑で分かりにくい |
業務要件とシステムが合わない | ● 業務に沿ったカスタマイズができない |
データ活用がうまくいかない | ● 入力データの品質が低い |
経営層に効果が説明できない | ● 効果を可視化する設計がされていない |
ベンダーに対しての不満が出た | ● サポートが不十分で業務に支障が出る |
これらの課題の多くは導入後に表面化しますが、その原因は「導入前の準備不足」にある傾向があります。システム導入を成功させるためには、事前のリスク対策と準備が不可欠です。
次項からは、課題に対する防止策を「導入前」「導入後」に分けて見ていきます。
①選定プロセスに現場担当者を巻き込む
システムの選定は経営層やIT部門が主導する傾向にありますが、実際に使うのは現場の従業員です。現場が関与しないまま進めると「使いにくい」「業務に合わない」というミスマッチが生じ、定着を阻む原因となります。
担当者には実際に製品を触ってもらい、操作性を確認する場を設けましょう。
②業務フローを可視化し、要件を言語化する
業務フローが未整理の状態で選定を進めると、導入後に「思っていた機能と違う」「うまくフローに合致しない」などの課題が出やすくなります。選定前に「システムに置き換えたい業務範囲」「必要な機能要件」などを棚卸ししておきましょう。
またAI-OCRの精度は100%ではないため、「完全に代替できる」といった過度な期待を抱くことは、定着や利用促進の妨げになることがあります。AIは「一次処理のみ」と割り切り、確認のフローも組み込みましょう。
③ データ活用の目的を設計する
活用目的のないデータ収集は形骸化しやすいため「このデータで何を判断するか」を導入前に定義し、入力ルールとセットで設計しましょう。
例えば、
請求書データ→部門別・取引先別の支出傾向を可視化、コストの管理をする
アンケートデータ→顧客満足度の推移を追い、改善施策に反映する
などの目的が考えられます。
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④ 現状値(ベースライン)を把握し、KPIを設定する
現状値が測定されていないと「導入前後」で比較できず、導入効果が可視化されません。事前に処理時間やエラー率などを測定したうえで、成功の定義をKPIとして設定しておきましょう。効果の可視化で現場の士気が上がるだけでなく、経営層への効果説明もしやすくなります。
⑤ 総所有コスト(TCO)と拡張性を試算しておく
システムの料金形態はさまざまです。事業の拡大にともなうユーザー数の増加など、契約前に運用フェーズで発生しうるすべてのコスト項目をベンダーに確認し、事前に試算しておきましょう。
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①部門ごとの活用方針とKPIを共有する
使い方の目標が明確でないと、従業員は従来のやり方に戻りがちです。部門ごとに「何をいつまでにどう使うか」を具体化し、管理職を巻き込みながら現場に共有しましょう。
②継続的なフォロー体制を整える
研修直後は使えていても、日常業務の中で発生する疑問・困りごとに対するサポートがなければ「使えないから、使わない」という悪循環が生まれます。定期的に利用状況を確認し、つまずいている従業員を早期に把握できる仕組みを整えましょう。
③社内で成功事例を共有する
システムの価値が伝わらないと利用への心理的ハードルは下がりにくいため、早期に効果を実感したユーザーの事例を社内に積極的に発信していくのも一つの手です。
④ 現場の声を吸い上げる仕組みを作る
現場の不満や改善要望が上がってこないと、問題が見えないまま放置されることがあります。定期的なアンケートや意見収集の場を設け、集まった声を改善に反映するサイクルを作りましょう。
AIによる業務効率化についてよくある質問をご紹介します。
A. 「繰り返し発生する」「手作業が多い」「ミスが起きやすい」の3点が重なる業務から探すのが近道です。例えば請求書のデータ入力や、複数システム間の入力作業などが該当します。現場担当者に「日々の業務で面倒に感じていること」をヒアリングするのも有効です。
A. 最初から全社展開を目指さず、効果が出やすい業務を1つに絞って小さく始めることをおすすめします。例えば「まず1部門の請求書処理だけをAI-OCRに置き換え、処理時間の変化を3カ月計測する」などの方法があります。効果が数字で示せるようになってから展開範囲を広げると、社内の理解も得やすくなります。
A. 「今どれだけ非効率か」を数字で示すことが出発点です。現状の処理件数・エラー率・担当者の稼働時間をあらかじめ計測しておき、導入後の効果と比較できる状態を作っておくと、経営層への説明に説得力が生まれます。
AIによる業務効率化は、単なる自動化を超え、事務から知的業務まで広範な組織の在り方を変える可能性を秘めています。大切なのは自社の目的を明確にしたうえで、スモールスタートを通じて現場の成功体験を積み重ね、持続可能な改善サイクルを回し続けることです。
事例を参考にしながら、「小規模導入から段階的に拡大する」ステップを着実に踏み出し、AIを組織の力に変えていきましょう。
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AIエンジニア/データサイエンティスト
五月女 亮(さおとめ りょう)
2021年 JDLA E資格 #1合格。2021年からフリーランスとして独立、主に画像解析のエンジニアとしての業務のかたわら、副業としてAIを利用した広範な案件に従事している。2023年 JDLA Generative Test 2023 合格。全国高専生ディープラーニングコンテスト(2023,2024)のテクニカルアドバイザーとしても活動中。
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