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日常的に請求書処理や仕訳入力が発生する経理の現場で、AIの活用を検討する企業が増えています。一方で「自社に合う製品をどう選べばいいのか」「何から着手すべきか」と迷っている方もいるのではないでしょうか。本記事では経理業務に使えるAIについて、事例を交えながら紹介します。
はじめに、経理業務とAIの現在地について整理していきましょう。
経理領域でも、AI-OCRや自動仕訳、異常値検知など、AIを活用した機能の導入が広がりつつあります。
活用領域は多岐にわたり、代表的な用途は以下のとおりです。
業務 | AIの役割 |
|---|---|
仕訳入力 | 過去の仕訳パターンを学習、勘定科目を提案する |
請求書のデータ化 | 紙やPDFの請求書から取引先名・金額・日付などを読み取る |
レシート・領収書のデータ化 | 画像から店舗名・金額・税区分を読み取る |
入金消込 | 振込名義の表記ゆれや一部入金を判定し、請求書と紐づける |
月次決算の異常値検出 | 過去データと比較して外れ値を検知する |
開示資料・経営報告のコメント生成 | 数値の変動要因を文章化してドラフトを作る |
予実差異の要因分析 | 差異の大きい項目を特定し、原因を推測する |
社内問い合わせ対応 | 社内規程や過去のQAをもとに質問に回答する |
近年は会計ソフト自体にAI機能が組み込まれつつあり、特段の意識をせずにAIを利用している企業も少なくありません。加えて、帳票やCSVの作成といった定型業務に生成AIを活用する動きも広がっています。
AIによって経理の仕事はなくなるのでしょうか。雇用の観点では、現状を以下のように整理できます。
経理の有効求人倍率は0.59と「買い手市場」(2024年時点)
ただし経験者枠の募集は依然として多い
出典:job tag(厚生労働省職業情報提供サイト)
https://shigoto.mhlw.go.jp/User/Occupation/Detail/430
有効求人倍率とは、ハローワークでの求職者1人あたりの求人数を示す指標です。経理の場合、2024年時点で求人1件あたり約1.7人の求職者がいる計算になります。一方で、求人数は年々増加傾向にあります。
なぜこのような矛盾が起きるのでしょうか。
理由は、経験者の採用枠が増えていることにあります。未経験者でも行いやすい仕事は定型性が高く、AIやシステム導入によって代替しやすいため、需要が減少傾向にあります。
一方「自社状況に合わせて適切な処理ができる」「法改正に即時対応できる」「Excelなどのシステムを柔軟に扱える」など、実務に沿った知見がある人材は依然として求められています。
上記から「AIにできる仕事の需要は減っていくが、人間にしかできない仕事の価値は上がっている」と結論づけられるでしょう。

経理が抱える悩みには、AIシステムの導入で軽減できるものもあります。ここでは代表的な3つの悩みを取り上げ、それぞれに有効なAIシステムを紹介します。
経理業務は振込データ作成や消込、経費精算、定型帳票作成など、反復的な単純作業が多くを占めます。特に月次決算や年末調整が重なる繁忙期は、紙やPDFの請求書・領収書の入力処理に追われ、残業も増えがちです。
こうした定型的な処理は、以下のようなシステムを導入すると削減につながるでしょう。
AI-OCRシステム(帳票を自動読み取り、データ化)
AI搭載会計ソフト(自動仕訳)
経理では簿記の知識を前提としつつも、企業によって処理の仕方が異なります。また月次決算など頻度の低い業務は手順を忘れやすく、毎回マニュアルを確認したり前任者に問い合わせたりする負担が発生することもあります。
このように「知識を参照する業務」は、社内ナレッジを組み込んだAIチャットボットやAIアシスタントを活用することで効率化できます。
RAG型チャットボット(自社文書を参照して回答する質問応答AI)
生成AIアシスタント(業務手順のガイドや疑問を解消)
経理は会社のお金を扱う業務であるため、入力ミスや二重計上、不正経費の見落としなどが損失や信用問題につながることがあります。また緊張が続くため、担当者の負担も重くなる傾向にあるでしょう。
この課題は「チェック機能を持つAIを使う」もしくは「一次処理をAIに任せ、人間はチェックに注力する」といった体制をつくることで軽減可能です。
自動照合AI搭載システム(残高・帳簿の自動チェック)
AI監査支援システム(重複計上・規程違反の自動チェック)
AI-OCRシステム(データ化をAI、人間がチェックに注力)
AI搭載会計ソフト(自動仕訳をAI、人間がチェックに注力)

本項からは現場で実際にどのようにAIが活用されているか、具体的なシーンを5つご紹介します。
「AI-OCR」とは、AIが画像データから文字情報を読み取ってデータ化する仕組みのことです。非定型帳票や手書き文字にも対応でき、日付・金額・取引先名などの項目を自動抽出することもできます。
例えばAI-OCR搭載の文書管理サービス「PATPOST」を導入したある自動車販売会社では、月間10,000枚を超える納品請求書処理について、3つの工程(支払確定処理・下請法*2の確認・電子帳簿保存法対応*1)をそれぞれ別の担当者が対応しており、1枚に対し最大で5回もの確認や処理が発生することもありました。
そこでPATPOSTを導入したところ、以下のような効率化が可能になりました。
支払確定処理:「顧客番号」「発注番号」などの必要項目を生成AIで一括出力
電子帳簿保存法対応*1:PATPOSTで納品請求書をデータ化し、法対応キャビネットに保管
下請法*2:生成AIの一括出力データから支払期日が法的要件を満たしているかを確認できる
名寄せ作業:データ化によりキーワード検索が可能に
以前は手作業で行っていた再確認(突合)も「AIが抽出したデータ」を各担当者が確認するだけで済むようになり、同時に法対応も行えるようになりました。
*1 電子取引データ保存の場合は、別途、訂正・削除の防止に関する事務処理規程の制定・遵守が必要
*2 導入当時。2026年1月に中小受託取引適正化法(取適法)に改正【関連記事】【ユースケース】紙ベースの請求書処理業務から脱却↗️
日頃の仕訳をAIが学習することで、最適な勘定科目を自動提案する会計ソフトも増えています。例えばfreee会計の「AIファイル自動記帳β」は、紙の証憑をクラウドストレージに入れることで、データ化や業種業態に基づいた仕訳ルールの適用、支払手段の判定、インボイス処理といった記帳業務をAIエージェントが自動で実行する機能を備えています。
参照:AIファイル自動記帳β(freee)
https://adv.freee.co.jp/advisor/ai-file-entry
出張旅費の経路チェックや重複申請をAIが自動検知し、アラートを出します。この「異常値検知」機能は、人間の目では見落としがちな僅かな数値のズレや、過去の申請パターンから外れた動きをAIが24時間監視することで、不正の早期発見と経営リスクの低減に役立ちます。
SAP Concurの「Verify」は38種類以上の監査項目に対応しています。国内では、ラクス「楽楽精算」とChillStack「Stena Expense」のAPI連携により、二重申請や交通費の水増しをAIが検知する仕組みも登場しています。
参照:Verify - 経費精算における不正をAIで検知し経理業務の効率化とガバナンス強化を実現(SAP Concur)
https://www.concur.co.jp/resource-center/brochures/verifyラクス、ChillStackと販売における戦略的パートナーとして連携 経費精算システム「楽楽精算」の不正検知機能を強化(ラクス)
https://www.rakus.co.jp/news/2025/0827.html
TOKIUMの「経理AIエージェント」は、行き先と日程をチャットで送ることで、AIが申請要否を判定し、情報を自動入力します。また発注・請求のデータをAIが即座に突合し、差異を原本リンク付き一覧で納品することもできます。
参照:経理AIエージェント(TOKIUM)
https://www.keihi.com/keiri-ai-agent/
ECサイトの注文データと入金データをAIが高速で照合し、差額発生時のみ通知する運用が可能です。R&ACの「V-ONEクラウド」の「消込候補提案機能」は、振込人名の表記ゆれや税込・税抜差異、振込手数料のズレを考慮し、AIが消込候補を自動提案する機能です。AIが提案し、最終確認は人間が行うという協調体制をとることで、精度とリスク管理を両立しています。
参照:V-ONEクラウド、AIが消込候補を提案する新機能「消込候補提案機能」をリリース(R&AC)
https://www.r-ac.co.jp/topics/14257/
なお、ここで紹介した事例の多くは、請求書や領収書といった帳票が正確にデータ化されていることを前提としています。言い換えれば、経理業務におけるAI活用の成否は、紙・PDF・メール添付といったバラバラな帳票を、いかに正確な業務データへ変換できるかという「前工程」にかかっています。この前工程となるデータ化作業を効率化するのが「AI-OCR」です。

AI-OCRは手入力工数を削減できる技術として、近年は会計ソフトや文書管理システムへの組み込みが進んでいます。本項では、読み取りと帳票管理を一体化できる「AI-OCRシステム」について解説します。
AI-OCRシステムは「紙やPDFの請求書を1枚ずつ手入力するのが大変」「月末・決算期の残業がつらい」「書類データを探しにくい」といった企業に適しています。
導入によって得られる主なメリットは、次の4点です。
コストの削減になる
属人化を解消できる
検索性が向上する
転記ミスの発見・確認を支援する
AI-OCRシステムを導入することで、手入力にかかっていた人件費を抑えやすくなるだけでなく、事前設定によって業務を標準化しやすくなり、担当者ごとの差を抑える運用につなげられます。
抽出データを表形式で出力できるPATPOSTのようなシステムを活用すれば、会計ソフトへの入力工程もスムーズに連携できます。
AI-OCRシステムの効果については、以下の記事もあわせてご参照ください。
【関連記事】AI-OCRによるペーパーレス化がDX推進の第一歩に!効果や導入例を紹介↗️
PATPOSTは「電子取引ソフト法的要件認証」「電帳法スキャナ保存ソフト法的要件認証」を取得しており、電子帳簿保存法の要件に沿った保存・運用をサポートします(電子取引データ保存の場合は、別途、訂正・削除防止に関する事務処理規程の制定・遵守が必要です)。
PATPOST内の「法対応キャビネット」に帳票をアップロードし、項目抽出処理機能の「電帳法テンプレート」を適用することで、ファイルの訂正・削除ができず、必要項目での検索が可能な状態で保存され、電子帳簿保存法の要件に沿った運用が可能になります。
<法対応キャビネット>

<「電帳法テンプレート」の選択画面>
※アップロード時

くわしくはこちら
AI-OCRシステムは手入力の工程を減らせる一方で、必ずしもすべての情報を正確に抽出できるとは限りません。システムを導入する際はAIの出力結果を「正解」と見なさず、人による確認と修正を前提にして導入を行いましょう。
AI-OCRの読み取り精度について知りたい方は、調査結果をまとめた以下の記事もご参照ください。
【関連記事】調査結果公開!OCRの宿敵「手書き文字」、AI-OCRの読取精度は●%だった! ↗️

ここからは、AI-OCRシステムをスムーズに導入するための流れを紹介します。
自社に合ったAI-OCRシステムを選定するために、まずは現状の課題と要件の整理から始めましょう。棚卸しを事前に行うことで、製品選定や稟議の工程をスムーズに進められます。
TODO | 詳細 | 備考 |
|---|---|---|
①課題を言語化する | ・フローを可視化後「何に困っているか」を業務単位で書き出す | 例:「支払請求書と見積書の突合に時間がかかる」「電帳法対応で検索性が悪く、過去書類の参照に時間がかかる」など |
②現状コストを算出する | ・処理時間の測定 | 製品の導入効果を実証するために必要。言語化された課題ごとに測定を行う。例:「注文書と納品書の突合作業:月20時間、対象200件」など。ミス・差し戻しによる工数も可能なら計測。 |
③現環境を棚卸す | ・既存システム(会計ソフト、ERPなど) | 製品選定時に必要になる情報群。先に必要要件を整理しておくことで、商品選定がスムーズになる。 |
現状を把握したら、製品選定に移ります。
AI-OCRシステムには特定帳票の読み取りを前提とした「特化型」や汎用的に使える「文書管理型」などがあり、ベンダーごとに製品設計が異なります。
また処理数/ID数/月額(年額)固定など料金体系も多様なため、費用対効果を出す際の計算式は製品ごとに変えて比較する必要があります。
【STEP1】で棚卸ししたコストや現環境と照らし合わせながら、製品を絞り込みましょう。
比較軸 | 確認方法 |
|---|---|
自社帳票の読み取り精度 | HPや問い合わせで確認、実帳票でお試し |
既存システムとの連携可否 | API仕様書の確認、連携実績の確認 |
法令対応 | 電子帳簿保存法・インボイス対応の確認(JIIMA認証など) |
料金体系 | 月額費用や従量課金など、体系に応じた試算 |
サポート体制 | 導入支援、運用サポートの内容・形式の確認 |
セキュリティ | クラウド形態、データ保管場所、認証の確認 |
【関連記事】AI-OCRの7製品を比較!自社に最適なAI-OCRを見つけよう ↗️
絞り込んだ候補製品を試すには「スモールスタート」がおすすめです。小さな範囲で導入することで現場の声を運用設計に素早く反映できます。また、仮に「機能が自社業務に合わない」「現場に定着しない」など製品がうまく適合しない場合も、投じたライセンス費用や導入工数が限定的なため、損失を最小限に抑えたまま製品の再選定に移れます。トライアルを提供しているAI-OCRシステムも多いため、読み取り精度や使いやすさなどを実際に確認する機会として活用するとよいでしょう。
なお、PATPOSTの法人プランは1カ月無料で利用ができます。無料期間内いつでも解約申し込み可能なため、お気軽にお試しください。
お申込み方法と解約方法についてはこちら
また【STEP1】で計測したコストと同様の指標(処理時間など)も、このタイミングで再度計測しておくと、前後の導入効果がわかりやすくなります。
スモールスタートで効果が確認できたら、本格導入に向けた社内稟議に進みます。
このとき「いくらかかり、いくら削減できるのか」「なぜこの製品を選定するのか」「導入後はどのように運用するのか」といった論点をあらかじめ整理しておくと、決裁者が判断しやすくなります。
これまでの工程で整理・測定してきた情報は、そのまま稟議書の根拠資料として活用できます。記載すべき項目としては、以下のようなものが挙げられます。
目的・背景
現状の課題
導入する製品の概要
選定理由(他社比較)
導入効果(定量)
費用詳細/費用対効果
導入スケジュール
経理とAIに関するよくある質問にお答えします。
A:AI-OCRは帳票を読み取ってデータ化する技術、会計ソフトは仕訳や帳簿作成を行う製品です。AI-OCRは技術であるため、会計ソフトや文書管理システムなどに搭載されていることがあります。
A:AIの導入がもたらすものは、経理担当者の仕事を「なくす・減らす」のではなく、「役割の変化」です。定型作業をAIが代行することにより、担当者は最終的な判断や例外対応に注力できます。
A:はい、少人数の組織では、属人化を防ぐ事業継続の観点で有効です。一方、業務量の多い組織では、大量の帳票処理やデータの突合作業などにAIを活用することで「1件あたりの処理コストを下げる」「入力ミス・確認漏れを防ぎやすくなる」といったメリットを享受でき、工数削減とリスクへの備えを同時に行えます。
A:AIの読み取り精度は100%ではないため、出力結果の正誤は必ず人の目によって確認する必要があります。一方で、人間が担ってきた全工程の一部をAIに代替させ「入力はAI」「確認・修正は人間」と分担することで、作業効率と精度を上げることができ、担当者の負担軽減にもつながります。
A:昨今のAI-OCR製品(PATPOSTなど)は手書き文字や複雑なレイアウトの読み取り精度が向上しており、一般的な範囲内であれば処理を行うことができます。ただし、活字と比較して読み取り精度が下がる傾向にあるため、確認や修正に多少時間がかかる可能性があります。
AIの進化により、定型業務はAIに任せ、人は判断に時間を使えるようになりました。AIは経理のさまざまな場面で使われ始めていますが、まずは自社の課題解決に適したAIを見極めるところから始めてみましょう。
請求書・領収書の処理に課題を感じている場合は、AI-OCRシステムがおすすめです。AI-OCR搭載の文書管理サービス「PATPOST」は、初期導入の負担を抑えながら、帳票データの活用を始めやすいサービスです。法人プランは1カ月無料*で利用できるため、ぜひご検討ください。
* 契約期間は1年となります。初年度の1カ月の無料期間経過後は11カ月分のご請求が発生します。無料期間は、同一アカウントでのお申し込みの場合、初回のお申し込みのみ適用されます。2回目以降のお申し込みは初回より費用が発生いたします。初年度の解約無料期間を除く契約期間中の解約は不可となります。契約終了日の30日前までに通知がない場合、契約が自動更新されます(12カ月)。プロフィール

データサイエンティスト
武藤 祐典(むとう ゆうすけ)
銀行における営業を経てIT業界へ転身。大手通信事業者でのデータサイエンティスト経験を経て独立。主に、テレビ局におけるデータ分析・AI活用支援、AI専門メディアにおけるテクニカルライティング、AI人材育成会社における研修講師登壇に従事している。
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